介護休暇の基礎知識/介護休業との違い、取得条件、注意点【社労士監修】

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介護休暇の基礎知識/介護休業との違い、取得条件、注意点【社労士監修】

家庭と仕事の両立は子育てに限ったことではなく、介護を理由に離職するケースも少なくありません。高齢となった両親に限らず身内の介護をしている人など、仕事を続けることに困難を抱えている人もいるでしょう。そんなときに活用したいのが「介護休暇」「介護休業」制度です。利用に関しては、それぞれ申請法やポイントがあり、給付金の支給がある場合もあります。会社の福利厚生として組み合わせることで、従業員の仕事と介護の両立をサポートすることができます。このコラムで詳しい内容を知り、制度導入の基礎知識を習得しましょう。

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この記事の目次

    「介護休暇」とは?

    「介護休暇」とは?

    制度の概要

    「介護休暇」とは、法律で定められた福祉制度で、労働者が要介護状態にある対象家族の介護や世話をするために取得できる休暇です。要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障がいにより、2週間以上の常時介護を必要とする状態のことをいいます。

    労働者は事業主に申し出ることにより、1年度において5日(その介護、世話をする対象家族が2人以上の場合は10日)を限度として介護休暇を取得することができます。

    欠勤にはならない? 有給休暇との違い

    介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や世話のための休暇を取得しやすくすることで、介護をしながら働き続けることができるようにするための権利として位置づけられています。したがって、労働基準法第39条の規定による年次有給休暇とは別に取得でき、企業は従業員に対して介護休暇を与える必要があります。

    ただし、労働者が介護休暇を取得して労務を提供しない日や時間について、企業が給与を支払う義務はありません

    ちなみに、企業によっては、失効年次有給休暇を利用するなど、一定の範囲で有給としている例もあります。

    「育児・介護休業法」と介護休暇の制度ができた背景

    持続可能で安心できる社会をつくるためには、一人ひとりの生き方や子育て期、中高年期といった人生の各ステージに応じて、多様な働き方の選択を可能とする社会をつくることが大切です。特に子育てや介護など、家庭の状況から時間的制約を抱えている時期の労働者については、仕事と家庭の両立支援を進めていくことが重要とされます。

    そうした社会背景と、職場におけるハラスメント防止策を強化するため施行されたのが、「育児・介護休業法」です。育児および家族の介護を行う労働者に対する支援措置を講じることで、労働者が退職せずに済むよう、また雇用の継続を図るとともに、育児または家族の介護のために退職した労働者の再就職促進が期待されます。

    介護休暇はそのうちのひとつの制度であり、企業がさまざまな事情に対応可能な休暇制度として導入・利用できる柔軟なシステムとなっています。

    介護休暇を取得するための条件

    対象となる労働者は?

    介護休暇を取得するためには、いくつかの条件があります。まず、対象となる労働者は、日々雇用を除く、対象家族を介護する男女の労働者です。以下3つの労働者については、労使協定を締結している場合に対象外となり、事業主は介護休暇の申出を拒むことができます。

    ①入社6か月未満の労働者

    ②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

    ③時間単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者
    ※③については、1日単位で介護休暇を取得することは可能となります。

    対象となる家族と続柄および介護制度の定め

    対象となる家族と続柄および介護制度の定め

    介護や世話の対象となる家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫となっています(上図参照)。介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみです。

    対象となる家族が、常時介護を必要とする状態であるかどうかについては、判断基準が定められています。以下のリンク内の図を参照しつつ、①介護保険制度の要介護区分において、要介護2以上であること、②下表の状態(1)~(12)のうち、2つ以上または3が1つ以上該当し、かつその状態が継続すると認められることで判断されます。

    基本的には上記の図の基準をもとにしますが、この基準に厳密にとらわれる必要はありません。労働者の介護休暇の取得が制限されてしまわないよう、個々の事情に合わせて、なるべく従業員が仕事と介護を両立できるような対応を事業主は柔軟に対応することが望まれます。

    介護休暇を取得できる日数は?

    取得可能日数は年5日~10日、時間単位取得も可能

    介護休暇が取得できる日数は、対象家族が1人の場合は年5日まで、対象家族が2人以上の場合は年10日までとなっています。また、取得単位は日単位だけでなく、時間単位で分割することも可能です。

    時間単位で取得する場合の「時間」とは、1日の所定労働時間数に満たない範囲とされています。つまり、休暇を取得する日の所定労働時間と同じ時間数を取得する場合は、1日単位での取得となります。また、日によって所定労働時間数が異なる場合、1日の労働時間数は、介護休暇を取得しようとする日の所定労働時間数に合わせることとなっています。

    介護休暇の活用例

    ◎自宅から病院など、通院時の付き添い

    ◎買い物や移動時の付き添い

    ◎市役所への各種手続き代行

    ◎ケアマネジャーとの短時間の打合せ

    ◎要介護者の急な体調不良

    介護休暇の取得が認められる範囲は、対象家族を直接介護するだけではありません。対象家族の通院などの付き添いのほか、対象家族が介護サービスの提供を受けるために必要な手続きの代行、その他の対象家族の必要な世話も含まれています。

    介護休暇の制度は、日単位や時間単位など柔軟に活用することができるため、介護にあたる時間ややり方を工夫し、その他の介護保険制度や介護サービスと組み合わせて活用などすれば、介護と仕事の両立も負担が軽くなるでしょう。

    介護休暇の申請方法、証明書類について

    介護休暇は通常の有給休暇と同様、会社に対して申請することで取得できます。また、書面の提出に限定されておらず、口頭での申出も可能です。申出にあたっては、社内で規定されている規則に従いましょう。

    また、事業主は労働者から介護休暇の申出を受けた場合、労働者に対して申出に係る対象家族が要介護状態にあることを証明する書類の提出を求めることができます。ただし、書類は「医師の診断書」などに限定されているわけではありません。要介護状態にある事実を証明できるもので、労働者が提出できるものが適当であり、「書類が提出されない」=「休暇が取得できない」とすることはできません。同時に、就業規則において、すべての介護休暇などの申出に、医師の診断書の添付を義務づけることなども望ましくないとされています。

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    介護で仕事を休むもうひとつの福祉制度、「介護休業」とは

    介護で仕事を休むもうひとつの福祉制度、「介護休業」とは

    家族介護のために長期の休みを取得できる制度

    「介護休業」とは、介護休暇と同様に法律で定められた福祉制度で、労働者が要介護状態にある対象家族の介護や世話をするために取得できる休業です。要介護状態の定義も介護休暇と同じで、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障がいにより、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいいます。

    介護休暇との違い

    介護休暇との大きな違いは、休業期間の長さです。介護休暇が短期であることに対し、介護休業は長期に渡る休業を取得できます。勤務先に制度がなくても育児・介護休業法に基づいて利用でき、仕事と介護の両立を支援する制度として、令和4年4月より取得要件についても段階的に緩和されています。

    休業可能な日数はどのくらい?

    休業できる期間は、対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できます。また、下図のように、分割で取得することも可能です。

    介護休業の取得例

    休業期間中は、介護にあたることはもちろんですが、それに限らず、職場復帰までに介護と仕事を両立できる体制を整える期間ともされています。期間を定めて雇用されている有期契約労働者(パート、アルバイト、派遣など)についても、一定の要件を満たせば取得することは可能となっています。

    介護休業を取得するためには?

    対象となる労働者や家族の条件

    介護休業の取得にあたっても、いくつかの条件があります。対象となる労働者は、要介護状態にある対象家族を介護する男女の労働者です(日々雇用を除く)。

    対象家族の範囲および要介護状態で示される常時介護を必要とする状態については、介護休暇と同じなので、先の表(図1・図2)を参照してください。

    有期契約労働者については、介護休業の申出時点において、取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に、労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないことを条件に取得が可能となっています。詳しくは下図を参照してください。

    また、以下の労働者についても、労使協定を締結している場合に対象外となります。

    ①入社1年未満の労働者

    ②申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者

    ③1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

    上記については、対象外の範囲の最大限を示しており、これより狭い範囲の者だけを除外することは可能です。逆に、例として「男性はすべて介護休業の対象から除外する」といったような、より広い範囲の者を除外する旨の労使協定を締結することはできません。

    介護休業を申請する方法

    介護休業を取得するにあたって、労働者は事業主に対する申出が要件とされています。また、申出は一定の時期に一定の方法によって行わなければなりません。具体的には、休業開始予定日の2週間前までとなっており、書面などにより次に挙げる事項を事業主に提出する必要があります。

    ①申出の年月日

    ②労働者の氏名

    ③申出に係る対象家族の氏名および労働者との続柄

    ④申出に係る対象家族が要介護状態にあること

    ⑤休業を開始しようとする日および休業を終了しようとする日

    ⑥申出に係る対象家族についてのこれまでの介護休業日数

    これに対し事業主は、労働者に対して申出に係る対象家族が要介護状態にあることなどを証明する書類の提出を求めることはできますが、提出を制度利用の条件とすることはできません。

    申出は、対象家族1人につき3回までであり、申し出ることのできる休業は連続したひとまとまりの期間となっています。当該対象家族について、介護休業をした日数の合計が93日に達している場合は、その対象家族について追加で介護休業を取得することはできません。

    また、休業終了予定日の2週間前までに申し出ることで、1回の申出ごとの休業につき、1回に限り事由を問わず休業終了予定日を繰り下げ変更できます。

    介護休業中の給与はどうなる?

    介護休業中の労働者は介護休業期間中、労務を提供しないことになるため、事業主が給与を支払う義務はなく、原則として無給となっています。ただし、会社によっては給与が支給される場合もあるので、就業規則を確認することが重要です。

    なお、雇用保険の被保険者が介護休業した場合は、一定の要件を満たせば介護休業給付の支給が受けられますので、次項からの取得条件・注意点などについても併せて確認してみてください。

    雇用保険の介護休業給付金制度について

    給付金を受けるための条件と取得の注意点

    雇用保険の被保険者については、一定の要件を満たした場合、ハローワークへの申請により介護休業給付が受けられます。支給額は、休業開始時賃金月額の67%です。受給資格と支給要件は以下を確認してください。

    受給
    資格
    ①家族を介護するために介護休業を取得した被保険者であること。

    ここでいう介護休業とは、職場復帰を前提としており、休業取得時に退職が確定(予定)している人は支給の対象となりません。また、被保険者とは、一般被保険者および高年齢被保険者をいい、期間雇用者も対象となります。

    ②介護休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が通算して12か月以上(原則、介護休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上必要。12か月ない場合は完全月で賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として取り扱う)あること。

    期間雇用者は、①②に加えて、休業開始時において、同一事業主の下で介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過するまでに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては更新後のもの)が満了することが明らかでない旨に該当しなければなりません。

    相対的必要記載事項 支給要件
    ①支給単位期間の初日から末日までに継続して被保険者資格を有していること。
    ②支給単位期間に、就業していると認められる日数が10日以下であること。
    ③支給単位期間に支給された賃金額が休業開始時の賃金月額の80%未満であること。

    ※支給単位期間とは、休業開始時から起算して1か月ごとに区切った場合の各期間のことです。

    給付金申請の方法と申請のタイミング

    介護休業給付の支給を受ける際は、以下の手続きが必要です。必要な書類や提出期限などがあるので注意してください。

    届出書類 ・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(介護) ・介護休業給付金支給申請書
    提出期限 ①賃金月額証明書…被保険者が「介護休業給付支給申請書」を提出する日まで。ただし、事業主を経由して提出する場合は、「介護休業給付支給申請書」と同時に(支給申請書の提出期限までに)提出することができます。
    ②介護休業給付支給申請書…各介護休業終了日(介護休業期間が3か月以上にわたるときは介護休業開始日から3か月を経過した日)の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日まで。

    届出先 事業所の所在地を管轄するハローワーク

    持参するもの ・賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など
    ・本人が事業主に提出した介護休業申請書
    ・介護対象家族の氏名・性別・生年月日および被保険者との続柄などがわかる書類の写し(例:住民記載事項証明書)
    ※申請書にはマイナンバーの記載が必要です。

    介護休暇と介護休業、それぞれを取得するメリットはどんなとき?

    介護休暇を利用するメリット

    介護休暇のメリットは、日単位・時間単位のどちらでも取得できること、申請は口頭でも可能で、当日申請に対応している場合もあることなどが挙げられます。したがって、突発的な休みや、短時間の休みが必要な場合に利用するとよいでしょう。

    <活用例>

    ◎自宅から病院など、通院時の付き添い

    ◎買い物や移動時の付き添い

    ◎役所や保険などの各種手続き代行

    ◎ケアマネジャーとの短時間の打合せ

    ◎要介護者の急な体調不良

    介護休業を利用するメリット

    介護休業のメリットは、長期にわたる休みを取得できること、雇用保険の被保険者で要件を満たせば介護休業給付の支給を受けることができ、期間雇用者も対象に入っていることなどが挙げられます。介護はもちろん、仕事と介護の両立を見据えた準備期間として利用できるので、事前に日程を決めておくことで、まとまった休みの間に対象家族について落ち着いて考えられる余裕が持てるでしょう。

    <活用例>

    ◎市区町村、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどへの相談

    ◎各種施設などの入居準備

    ◎介護サービスの手配

    ◎家族で介護の分担を決定

    ◎家族の看取りが近づいている

    従業員の介護休暇取得に際して企業側に求められること

    介護者となる従業員は、突発的に発生する介護に伴う備えがなければ、仕事との両立が困難になり得るでしょう。それを防ぐためにも、企業はより一層労働者の課題を把握し、個々の事情に応じた休暇・休業制度の導入を推し進める必要があります。

    厚生労働省が策定する具体的な取組方法や支援メニューを取り入れて、介護休暇・介護休業制度の円滑な運用を行い、従業員からの申出へ迅速に対応できるように整えていきましょう。また、労働者に向けた説明会の実施や、制度周知の徹底を図ることも大切です。

    介護と仕事の両立支援に対応するための時期に応じた環境構築を考えてみましょう。

    管理職 労働者
    通常期 ・介護の相談を受けたら、まずは丁寧に話を聞き、面談シートなどを活用するなど、現在の状況や業務上の課題について話し合い
    ・ロールモデルや制度ツールの提供
    相談・調整期 ・介護の相談を受けたら、まずは丁寧に話を聞き、面談シートなどを活用するなど、現在の状況や業務上の課題について話し合い
    ・ロールモデルや制度ツールの提供
    ・介護の相談
    ・制度やツールなどの提供
    両立体制構築期 ・今後の働き方について希望や配慮の方法について確認(引き継ぎなどがあればこの時に行う。)
    ・制度を利用する場合の、具体的な希望期間や時期などを確認し、介護支援プランを作成
    ・制度利用の申出
    ・介護支援プランの確認と作成
    両立期 ・状況の変化に応じた対応を随時確認
    ・本人からの聞き取り、介護支援プランの見直し、必要に応じて業務分担の調整
    ・フォロー面談
    ・介護支援プランの見直し

    より複雑化する従業員の労務管理への対応

    ワークライフバランスを重要視する社会において、介護休暇や介護休業は、さまざまなケースが考えられる介護の分野で重宝される制度といえるでしょう。しかし、これらの制度に限ったことではありませんが、制度が増えることで労務管理はより複雑化し、労務管理の負担も増えていくことが予想されます。もし紙やエクセルなどのアナログ管理を続けているなら、システム化による業務効率化がおすすめです。

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    まとめ

    高齢化社会の今、介護はとても身近な課題です。いつ誰が介護に直面しても円滑に業務を回せる職場をつくるために、介護休暇や介護休業のような仕事と介護の両立を支援するための制度の存在を知り、必要に応じて利用できるように社内環境を整えておくことがポイントです。必要な人材が介護によって離職を余儀なくされるようなことを防ぐためにも、制度の内容をしっかり理解して活用していきましょう。

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    石川 弘子
    • 監修石川 弘子
    • フェリタス社会保険労務士法人 代表
      特定社会保険労務士、産業カウンセラー、ハラスメント防止コンサルタント。
      著書:「あなたの隣のモンスター社員」(文春新書)「モンスター部下」(日本経済新聞出版社)
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