タイムカードの電子化、失敗を防ぐために知っておきたい基礎知識
紙のタイムカードによる勤怠管理は手軽でコストも安価な一方で、実際に運用することで見えてくる業務効率化の課題や労務リスク、近年進む働き方の多様化のための労働環境整備など対処できない業務も存在します。特に以下のような課題を抱える労務担当者は多いのではないでしょうか。
- ● タイムカードの打刻漏れが多く、確認作業に時間がかかっている
- ● 集計業務や有給管理を手入力で行っており、ミスや手間が頻発
- ● 残業をリアルタイムで把握できておらず、36協定違反のリスクを感じている
- ● 複数拠点のタイムカード収集に時間がかかっている
- ● 直行直帰やリモートワークなど、働き方の多様化を進めたいが管理できない
どれか一つでも当てはまるなら、タイムカードを電子化(デジタル化)するタイミングです。
タイムカードの電子化は打刻から集計・データ管理まで対応できる勤怠管理システムの導入によって叶えられますが、“あるポイント”を見逃して導入してしまうと莫大なコストをかけたにもかかわらず、運用に失敗してしまうリスクがあります。
導入前によくあるシステム導入のトラブル事例をもとに、どのような勤怠管理システムを選べばよいのかをご紹介します。
この記事の目次
「こんなはずじゃなかった」を防ぐシステム選びの基礎知識
勤怠管理システムとは、従業員の打刻から勤務時間の集計業務、残業管理や有給管理まで一元管理できるシステムです。
注意点として、システム導入さえすれば必ずしも勤怠管理の課題から即座に解放されるわけではありません。「初期設定が複雑すぎて設定段階であきらめてしまった」「サポートが手薄でなかなか設定が進まない」「使い方が分かりづらく、社員からの問い合わせが頻発する」など、想定外のトラブルが起きることがあります。
適切なシステム選びの基準は会社によってさまざまですが、思いもよらない失敗を防ぐためには、「自社の運用に乗せられるシステムかどうか」を見極めることが大切です。そのためにまずは勤怠管理システムのメリット、デメリットを理解し、自社内での運用イメージを描きましょう。
勤怠管理システムの種類
勤怠管理システムは2種類あります。
サーバ設置からシステム設計まで自社でカスタマイズして作成するオンプレミス型と、システム会社が作成した既存のシステムをインターネットを経由して利用するクラウド型です。
① オンプレミス型
分類 | オンプレミス型 |
---|---|
メリット | ・会社の勤怠ルールに合わせてカスタマイズできる ・社内システムと連携しやすい ・セキュリティ対策を自社の水準にあわせられる |
デメリット |
・初期費用が高い ・サーバやネットワーク構築用の機器調達が必要 ・導入後も日々のサーバ管理やメンテナンス、障害対応などへの対応が必要 ・法改正などのアップデートは、自社で改修が必要 |
オンプレミス型は旧来からある形式で、自社のリクエストにあわせてシステムを作成するため自社内の勤怠ルールに沿ったカスタマイズができるというメリットがあります。一方でサーバやネットワーク設定など準備段階で専門的な作業が多く導入後のメンテナンスにも作業やコストが発生するため、IT専門の人材が社内に在籍しており、ある程度の予算をかけられる場合におすすめです。
⇒オンプレミス型が向いているのは…
- ●予算に余裕がある
- ●ITに詳しい人材が常駐している
- ●必ず連携したいシステムやフローがあるなど具体的に導入イメージを描けている
② クラウド型
分類 | オンプレミス型 |
---|---|
メリット |
・インターネットに接続できればどこからでも使える ・導入設定が比較的カンタン ・サーバの管理やメンテナンス、障害対応が不要 ・法改正などのアップデートは、サービス提供会社が自動で対応する |
デメリット |
・カスタマイズに制限がかかる ・月額でサービス利用料がかかる ・サービス終了のリスクがある |
クラウド型はオンプレミス型と相反するような特長をもっており、既存のシステムを利用することにより初期設定の費用や導入コストを抑えて比較的手軽に導入できるというメリットがあります。一方で、既存のシステムを利用することになるため、会社に合わないシステムを選ぶと運用に失敗してしまうことがあります。社内にシステム担当がいなくても労務担当者だけで手軽に導入・運用することが可能なため、「まずシステム化に挑戦したい」という意向であればクラウド型システムを導入することをおすすめします。
⇒クラウド型が向いているのは…
- ●安価に導入したい
- ●担当者にシステム導入の経験がない
- ●具体的な導入イメージを検討中
勤怠管理システムのメリット、デメリット
勤怠管理システムによってタイムカードを電子化すると、業務上さまざまなメリットがあります。
メリット
① 法律違反リスクの低減
法律の基準に則ってシステムの設計を行っているため、システムにあわせて管理することで法律違反リスクを低減することができます。
2019年から実施されている働き方改革によって法改正が連続的に行われ、勤怠管理の運用フローを見直すタイミングが増えています。基本的な残業上限を45時間までとする「時間外労働の上限規制」や年次有給休暇を年10日以上付与している従業員に対する「年休5日以上の消化義務」、将来的に5年の保管を義務付けられることとなった「出勤簿等の書類保管の期間延長」など勤怠管理に影響をおよぼす法律の施行は多岐にわたり、紙の書類だけで適切な勤怠管理を行うのは困難な時代になってきています。
その点、勤怠管理システムであれば、残業時間のリアルタイムなチェックによって36協定の上限を超えないように対応したり、休暇の残数カウント機能や年次有給休暇管理簿の自動作成が行えたり、過去の勤怠情報をシステム内でそのまま保管できます。
② 業務効率化、コスト削減
従業員による打刻から勤怠情報の集計までシステムでほぼ自動で一元管理できるため、アナログ管理でよく起こる「入力漏れ」や「誤入力」による集計ミスが防止できます。
たとえば、打刻漏れや申請忘れは、出勤簿上のアラート表示ですぐに気づくことができます。また、年次有給休暇の付与数、残日数の管理においても申請や承認作業を申請者・承認者へシステム内で情報を送信しあうことで管理できます。これらの機能により、給与計算や勤怠管理に必要な打刻情報や休暇情報を自動で集計することで、毎月の給与計算の作業もスムーズに行えるようになり、人事労務担当者の業務効率化につながります。
③ 打刻情報の改ざん、不正防止
紙のタイムカードの場合、誰がタイムカードを押しているのか判別できなかったり修正の履歴があいまいになりやすく、不正や改ざんが発生するリスクがあります。システムには、それらのリスク防止に役立つ機能が搭載されています。
● 打刻情報の修正は申請、承認制にできる
従業員による修正申請と管理者の承認を経ることで、修正情報が勤務表へ反映される仕組みにより、自由な情報の書き換えを制限することができます。
● GPSによる打刻時の位置情報取得ができる
打刻した場所の位置情報を取得することができるため、打刻場所を偽ることができないようになっています。
④ ペーパーレスによって書類保管、データ管理が容易に
ペーパーレス化により、日々の書類保管の手間やスペース確保が不要になります。また、過去の情報はデジタルデータとなるため検索性があがり、必要に応じていつでも即座に情報の取り出しが可能となります。
⑤ 働き方の多様化に対応できる
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとしたテレワーク(リモートワーク)人口の増加など、働き方の選択肢が増えてきています。紙のタイムカードの場合、出社して打刻することが基本となりますが、勤怠管理システムの場合は外部のインターネット環境から接続することで場所を選ばずに勤怠管理が行えます。テレワークに限らず、出張や直行・直帰の仕事が多い会社でも同様にこのメリットが享受できるでしょう。なお、オンプレミス型は外部環境の構築に手間がかかりますが、クラウド型勤怠管理システムは特別な接続設定がなくてもインターネット接続だけでアクセスが可能なため、いざテレワーク対応を実施する必要が出てきたときに切り替えることが容易です。
一方で、デメリットもゼロではありません。
デメリット
① 導入設定で手間がかかる
タイムカードと比較すると手間や検討事項が多く、すぐに運用開始することはできません。まず、就業規則など社内の勤怠ルールを踏まえて自社内でシステム要件を整理したのち、要件をかなえられるシステムを設計ないし選定する必要があります。またシステム会社と契約後は、設定フローを関係各所と調整しながら作成し、テスト運用や社員教育を経て運用スタートという流れが基本です。
特につまづきやすいポイントは一番最初に行うシステム要件整理になります。勤怠管理の知識とシステムの知識は異なるため、最初はどのように既存の仕組みをシステム化すればいいのか迷いがちです。IT知識が豊富な人材が社内にいない場合や人手が足りない場合は、システム会社側でサポートサービスが受けられるか確認しましょう。
② タイムカードより利用手順が複雑
システム化することで便利な機能が増える反面、利用手順が複雑化します。従業員向けの利用説明会や取り扱い説明書の作成を通じて利用方法を周知して行く必要があります。使いづらいシステムの場合は従業員の利用が進まず、システム導入の失敗につながることがあります。教育コストをおさえるためにも、シンプルで操作手順がわかりやすいシステムを選ぶことをお勧めします。
③ 初期投資や月々の運用コストがかかる
紙のタイムカードの場合、打刻機の費用以外はタイムカードの追加購入費用のみで済みますが、システムの場合は初期費用や月額費用がかかってきます。オンプレミス型の場合は、サーバの保守(管理)やシステムエラー修正、法改正によるアップデート対応に応じてコストが発生します。クラウド型の場合は、各システム会社の設定した月々のシステム利用料を支払う必要があります。相場金額は、サービスや利用人数によって変わるため定まっていませんが、クラウド型のほうが初期投資の金額が抑えられて比較的安価に利用できるシステムが多いでしょう。
システム導入でよくあるトラブルと確認ポイント
システム導入時、以下3つのトラブルが発生しがちです。それぞれの具体的なトラブルパターンと対策をお伝えします。
【パターン1】初期設定が複雑すぎて設定段階であきらめてしまう
打刻画面はシンプルで分かりやすそうにみえても、申請画面がわかりづらかったり設定フローが複雑で挫折してしまい、なかなか導入に至らないことがあります。対策として、デモ画面を確認するときに、打刻画面だけでなく管理画面や申請・承認画面などの操作についても問い合わせましょう。また、具体的に実現したいフローがあれば、そのフローの設定方法について運用方法を訪ねるのもよいでしょう。
● 成功事例:「従業員の誰もが使いやすい」サービスであるか
システム自体が使いづらいと設定作業や設定後の全社的な利用が進まず、かえって足枷になってしまうという事態を招きかねないため、直感的な操作やわかりやすいメニュー表示がなされているシステムであるかをチェックして選定しました。結果、経理4人で3〜5日かかっていた給与計算は担当者一人でも半日足らずで対応可能に、経理部の月初の残業がほぼゼロになりました。
【パターン2】システム会社の支援が手薄でレスポンスが遅く設定が進まない
サポート体制には、担当が専任で1名以上つく専任サポート制とチーム全体で対応するチームサポート制の2種類があります。また、サポート内容もメール回答のみとするところから、電話や会議を通じて具体的に課題を深掘りして提案を返すところまでさまざまです。システム会社によってはオプションとなっているところもあり、利用料金は格安でもサポートが有料であるため、結果的に他社と同額になってしまい金額的なメリットがなかったというケースもあります。対策として、具体的にどのようなサポートが受けられるのか、レスポンスのスピードや対応方法、サポート範囲などをあらかじめ確認しておきましょう。
● 成功事例:一貫した専任サポート制でスムーズに初期設定できた
労務知識とシステム知識の両方を兼ね備えている専任担当者がいたことで、ぼんやりとした運用イメージを伝えるだけでしっかりと具体的な提案をいただけました。結果、自社にあったシステム設定を落とし込むことができました。
【パターン3】システムの操作性が悪く社員からの問合せが頻発する
勤怠管理システムは全社員が利用対象となるため、利用者の大半を占める従業員が使いやすいシステムであるかどうかでうまく運用に乗るかが左右されます。システムの使い勝手は、機能の有無だけを重視していると見落としがちなポイントです。対策として、申請画面が直感的で分かりやすいか、マニュアルがなくても誰でもすぐに操作を覚えられるフローになっているか確認しましょう。システムに不慣れな従業員が多い会社の場合は、何名かの従業員に協力してもらい、実際の申請画面をチェックしてもらうのもよいでしょう。
● 成功事例:事前にスタッフ数名で製品画面を確認
デモ画面を見たスタッフ数名から「これなら私でも使えそう」と言ってもらえたことが選定ポイントになりました。結果的に導入に成功し、集計ミスがなくなり担当者1人でも月次の締め作業ができるほど業務効率化できました。
タイムカードの電子化は、明確なシステム導入のイメージを描けるかが大切
システム選定のポイントは、機能性・価格ももちろん大事ですが「運用にのせられるか」が最も重要です。運用にのせるためには、システムのメリット・デメリットをふまえて、コスト、IT知識のある人材の有無など自社の状況にあっているのかをシステム会社の担当者とすり合わせながら、導入後の運用イメージを具体化できるかで決まります。
イメージの具体化には、情報収集が必要です。気になるシステムがあれば都度問い合わせ、担当者といっしょに導入イメージをすり合わせてマッチするシステムを見つけてください。
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