15分単位の残業代計算は違法!企業が取るべき対応とは?

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15分単位の残業代計算は違法!企業が取るべき対応とは?

従業員の勤務実態の把握は、通常は労働した時間がベースとなります。では、労働時間はどのような単位で把握すべきでしょうか。1時間、30分、それとも15分単位というように端数を切り捨てるような計算方法は切り捨てた分の賃金を支払っていないとして、労働基準法違反となります。適正な賃金を支払うためには、1分単位による勤怠管理を行い、実労働に即した賃金計算を行わなければなりません。本記事では、適法な賃金の計算方法などに触れながら、企業が取るべき対応について解説します。

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この記事の目次

    15分単位の勤怠管理は違法、労働時間計算は原則1分単位で

    15分単位の勤怠管理は違法、労働時間計算は原則1分単位で

    15分単位の切り捨てが違法になる理由

    毎日きちんと勤怠管理をしていたとしても、「15分単位で把握している」「端数の時間は切り捨てて残業代を計算している」といったような運用をしている場合、労働基準法に違反し、罰則の対象となります。

    (1)賃金支払いの原則

    従業員への賃金の支払いについては、次のように労働基準法に定められています。

    (賃金の支払)

    第24条

    第1項 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

    第2項 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

    上記の労働基準法第24条に定められているとおり、賃金は「①通貨で、②直接労働者に、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて支払わなければならない」とされています。これらは、いわゆる賃金支払いの5原則と呼ばれるものです。

    たとえば15分単位で残業代を把握し、15分未満の端数を切り捨てる運用は、15分未満の時間分の賃金を払っていないことになります。つまり、賃金の一部しか払っていないとして、上記③「全額払いの原則」に反することとなり、違法となります。
    適切な残業代の支払いを行う前提として、労働時間の把握は1分単位で行うことが重要となります。

    (2)全額払いの原則に反するとどうなるか

    労働基準法には罰則規定があり、第24条に違反すると「30万円以下の罰金」が科される場合があります。そのほか、法違反として労働基準監督署から行政指導を受けるリスクもあります。

    (3)就業規則に「15単位未満は切り捨てとする」と記載されている場合

    会社によっては、就業規則の賃金規定に「労務管理は15分単位とし、それに満たない分は切り捨てとして取り扱う」と定められているケースがあるかもしれません。この場合は、就業規則のその規定自体がそもそも労働基準法に違反しているとして無効となりますので、切り捨ての運用も無効となり、未払い賃金が発生していることとなります。

    15分単位の残業計算が行われることが多いのはなぜ?

    (1)15分単位の残業計算が行われる理由

    15分単位の計算が行われる主な理由としては、1分単位での勤怠管理よりも「15分単位」といった切りのよい時間での管理が簡単であるからというものがあります。また、切りのよい時間であれば、賃金の支払いの際の計算も簡単になるというのも理由のひとつといえるでしょう。
    しかし、「管理しやすい」「計算が簡単になる」といった理由はあくまでも会社側の一方的な都合であり、違法であることに違いはありません。原則どおり、勤怠は1分単位で管理し、残業代の計算も1分単位で行い、正しい賃金を支払う必要があります。

    (2)そもそも「労働時間」とは?

    そもそも労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下にある時間を指します。つまり、会社から業務上の指示を受けて作業をする場合は、労働時間ということになります。
    たとえば、業務上必ず指定の制服や作業着に着替えて仕事をすることが義務付けられている場合は、着替えをすることも「業務上の指示」を受けて行う業務の一環として、原則的に労働時間に含まれると考えられます。

    15分単位の勤怠管理によって生じる問題と罰則

    15分単位の勤怠管理によって生じる問題と罰則

    (1)行政指導

    15分単位未満で残業代を切り捨てる運用が行われていれば、賃金の一部未払いとして労働基準監督署から是正勧告を受けるリスクがあります。仮に悪意がなかったとしても、正しい時間で再度計算をした結果、実際に支払った賃金額と比較して未払いがあれば、法律違反を指摘されるために注意が必要です。

    (2)刑事罰の対象となる

    労働基準法には罰則も定められているため、賃金の一部未払いの場合は同法第24条に違反するとして罰則の対象となるおそれがあります。また、時間外労働や休日・深夜労働の割増賃金を支払っていないとして第37条違反となり、同じく罰則の対象となる可能性があります。
    いずれも刑事事件として立件されると罰金刑等が科されることとなり、企業にとっては重いリスクといえるでしょう。

    (3)社会的信用失墜

    行政指導が入った場合、あるいは刑事罰が科されたとする場合は、その事実が一般的に公表されることがあります。また、公表の有無にかかわらず賃金未払いが発生しているという事実だけでも、遵法意識の低い会社とみなされるリスクがあります。コンプライアンスに対して厳しい目線が注がれる昨今、株主や取引先・従業員といったさまざまなステークホルダーからの信用を損なう可能性があります。

    (4)従業員から賃金支払請求を受ける

    また、賃金が未払いとなっている従業員から、未払い賃金の支払いの請求を受ける可能性があります。従業員の人数やその期間の長さ・金額の多寡によって、大きな金額となる場合があります。消滅時効にかかっていなければ支払う義務が生じますし、遅延損害金を上乗せして支払うケースもありますので、その計算・支払いにかかる工数や実際の支払い金額に照らして大きなリスクといえるでしょう。

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    計算の仕方によっては残業時間の切り捨てが認められることも

    計算の仕方によっては残業時間の切り捨てが認められることも

    このように、原則として労働時間の端数を切り捨てる運用は労働基準法に反するとして、認められていません。しかし、従業員にとって不利にならない場合などに限り、例外的に端数処理が認められるルールもあります。
    割増賃金を計算するときに例外的に端数処理してもよいとされるケースは、以下のとおりです。

    ■例外的に認められる割増賃金計算時の端数処理

    (1)1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。

    (2)1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金額の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。(昭和63年3月14日付け基発150号)

    <出典:労働基準法関係解釈例規について

    この通達に定められている場合は、50銭未満か否かによって従業員にとって不利益になることもあれば利益になることもあるということから、例外的な端数処理として認められています。

    その他、労働時間の端数処理のルールとして、以下の取り扱いが通達上認められています。

    ■労働時間の端数処理のルール

    以下の方法による場合には賃金不払いに係る法違反としては取り扱わないとされています。

    1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。(昭和63年3月14日付け基発150号)

    <出典:厚生労働省鹿児島労働局

    この通達では、1か月の実労働時間全体を集計して賃金を計算するケースでの運用を定めています。この場合も、労働時間が30分未満の端数の切り捨てが認められている一方で、それ以上の切り上げも認められており、必ずしも従業員にとって不利益が生じないケースが想定されています。

    企業が行う正しい勤怠管理とは?

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    残業代計算のポイント

    残業代は、従業員の実労働時間の総数や時間帯、出勤日などによってそれぞれ計算方法が異なります。1分単位で把握した労働時間に基づいて正しく計算ができるよう、ポイントについて整理していきましょう。

    (1)1時間当たりの基礎賃金

    残業代を正しく計算するためには、1時間当たりの基礎賃金を把握する必要があります。アルバイトやパートタイム労働者のように時間給で働く人の場合はわかりやすいですが、多くの会社の正社員は月給制を採用していると考えられるので、月給制を例にとります。

    月給制の場合の1時間当たりの賃金単価は、「基礎賃金÷月平均所定労働時間」で算出します。ここでいう「基礎賃金」に含まれないものとして、労働基準法第37条では「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。」と定められています。
    これを受けて、労働基準法施行規則第21条では、「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われた賃金」「一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」を含まないとして列挙しています。
    一方、「月平均所定労働時間」は、年間の所定総労働時間(365日から1年間の所定休日を引いた日数×1日の所定労働時間)を12で割って算出します。

    (2)給与体系による算出方法について

    時給制や年俸制などの給与体系について、算出方法はそれぞれ以下のとおりです。

    時給制 1時間当たりの賃金
    日給制 日給÷1日当たりの所定労働時間
    週給制 1週間の基礎賃金÷1週間当たりの平均所定労働時間
    月給制 1ヶ月の基礎賃金給÷1ヶ月当たりの平均所定労働時間
    年俸制 1年間の基礎賃金÷1年当たりの所定労働時間

    (3)残業代の割増率

    残業代の割増率は一律ではなく、働いた時間帯・時間数・時間外労働などによって変動します。

    ●法定時間外、深夜(午後10時~翌午前5時まで)に働いた場合:1時間当たりの賃金の2割5分以上
    ●法定休日に働いた場合:1時間当たりの賃金の3割5分以上
    ●1か月に60時間を超える法定時間外労働させた場合:1時間当たりの賃金の5割以上

    勤怠管理における企業の対応

    ここまでは、残業代の割増賃金の計算方法について解説してきました。前提として、1分単位の勤怠管理をする上で企業がすべきことを改めて整理していきましょう。

    (1)遅刻・早退の際のルール

    遅刻や早退で、従業員が所定労働時間よりも短い時間で退勤することがあります。その際の取扱いについてはどうなるのでしょうか。労働契約は働いた分だけ賃金が発生するものなので、逆にいえば足りない時間分については「働いていない」ということから、賃金は発生しないと考えられます。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。
    そうであれば、遅刻や早退で労働できなかった時間分の賃金を控除することは認められるはずです。
    ただし、たとえば3分遅刻した分について、15分働いた分を控除するといったような扱いをすると、実際に労働した時間分も控除してしまうことになり、結果として未払い賃金を発生させてしまいます。ですから、労働時間は1分単位で管理し、1分単位で賃金を算出する管理方法がよいでしょう。なお、こういったルールは明文化して定めておきましょう。

    (2)フレックスタイム制・裁量労働制の賃金計算

    「フレックスタイム制」は、労働時間の開始時間や終業時間を従業員が選ぶことのできる労働形態をいいます。
    一方「裁量労働制」とは、業務の性質上、業務遂行を従業員の大幅な裁量に委ねる必要のある職種において、あらかじめ労使間で定めた時間を労働時間とみなす制度のことをいいます。
    これらの制度のもとに働く従業員についても労務管理は必要であり、1分単位での把握をするのがよいでしょう。なお、裁量労働制であっても、深夜労働・休日労働を行わせた場合は労働基準法の適用を受けるため、割増賃金の計算が必要となりますので注意が必要です。

    (3)賃金支払いルールの明確化

    これらのルールを定めた場合、明確に規定化して周知しておきましょう。
    働くルールを定める就業規則には、必ず記載しなければならない項目として「賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切、支払の時期」を定める必要があります。
    賃金支払いのルールは従業員にとっても従業な事項であり、適切に公平に運用されるためにもルールを明確化しておくことが重要です。

    労働時間を正確に計算するなら勤怠管理システムを導入しよう

    労働時間を正確に計算するなら勤怠管理システムを導入しよう

    残業代の計算にあたっては、15分単位での切り捨ては違法であり、1分単位で従業員の実労働時間を把握する必要があることを本記事でお伝えしてきました。

    このように、従業員の労働時間は1分単位で把握して管理し、適切に割増賃金の計算を実施することが必要ですが、そもそも前提として勤務状況を適切に把握するためにはどうすればよいのでしょうか。
    社員の勤怠管理の適切な実施にあたっては、厚生労働省のガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が参考になります。

    このガイドラインによれば、「使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること」とされています。本来であれば、管理者が社員の勤怠を目視するなどして現認できればよいのですが、それはあまり現実的な方法ではないでしょう。正確に、かつ適切に把握するためには、まずは社内の勤怠管理を実施する環境整備から始めましょう。

    環境整備に役立てられるのが勤怠管理システムの導入です。勤怠管理システムを導入することで、従業員の勤怠状況を1分単位で日次管理することが容易となります。また、残業時間も自動集計することができるため、その集計データをもとに、割増賃金の計算や煩雑な端数処理計算も法律の基準に合った運用で自動的に処理することが可能です。その他にも残業抑制のためのアラート機能や休暇管理フローなど、勤怠管理に必要な機能が多数搭載されているため、勤怠にまつわる情報を一元管理することができます。

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