派遣社員の勤怠管理はどのように行う? 派遣元、派遣先の勤怠管理のポイント
働き方が多様化している昨今、派遣社員として働く人や、それを受け入れる企業も増えてきました。ただ、派遣社員は正社員などの直接雇用とは異なり、派遣社員と労働契約を結ぶのは派遣元会社です。そして派遣先企業には労働を提供する形となります。派遣においてはこのような「三者構造」となっているがゆえに、派遣元会社・派遣先会社がそれぞれ派遣社員の労務管理に関して追う義務が複雑になっています。
本記事では、派遣社員を受け入れる側の企業が派遣社員の勤怠を管理する際の注意点やポイントを解説するとともに、派遣元会社の義務などについても見ていきます。併せて、これらの勤怠管理に適したシステムについても触れていきましょう。
この記事の目次
派遣社員の勤怠管理の課題
派遣社員は正社員などの直接雇用の従業員とは異なり、派遣元・派遣先それぞれの企業と三者関係にあります。そのため、勤怠管理にも派遣社員特有の3つの課題があります。
第1の課題は、勤怠状況を正しく把握しにくい点です。派遣社員は派遣元と雇用契約を結んでいますが、実際に業務を行うのは派遣先企業です。このため、派遣先の管理者が勤怠状況を直接確認することもありますが、派遣元企業も営業担当者やシステムを通じて勤怠状況を把握します。雇用元と業務提供先が異なるため、勤怠管理が難しい状況といえます。
第2の課題は、勤怠情報の一括管理が困難ということです。派遣社員の勤怠管理は、派遣元である派遣会社と派遣先会社の双方で行う必要があります。そのため、両者の連携がうまくいかないと、勤怠情報の整合性が取れないことがあります。また、派遣先で記録した勤怠情報を派遣元に報告する際にズレや重複などが発生する場合があるため、調整が必要となる点でも一括管理が難しいといえるでしょう。
そして第3の課題は、派遣元・派遣先の双方で勤怠管理方法が異なるケースがあるということです。派遣元と派遣先で異なる勤怠管理方法を採用しているケースがあります。使っている方法やシステムによっては管理項目が違ったり、データの互換性がなかったりすることも多く、データの統合や整合性を保つための調整が必須となります。
もし派遣社員用の勤怠管理システムを導入したり、双方にて同じシステムを使う場合、その導入や維持にコストがかかることもあります。また、タイムカードや勤怠情報をそれぞれ保管する工数もかかってきます。
派遣社員の権利を守る法律
労働者派遣法
労働者派遣法は、派遣労働者の保護と労働者派遣事業の適正な運営を確保することを目的とし、1986年に施行されました。制定以前から類似の事業を営む企業もありましたが、第三者が企業と労働者との間に入って中間搾取するような事業は労働基準法で禁止されていることから、労働者派遣が適切に行われるよう、労働者を保護する目的で法整備がなされました。派遣事業を営むためには、一定の基準を満たして厚生労働大臣の許可を受けることが必要です。
また、労働者・使用者の直接雇用関係ではなく、派遣元・労働者・派遣先の三者構造であることを踏まえ、派遣元事業者・派遣先事業者には、それぞれ同法で義務が定められています。2020年にはいわゆる同一労働同一賃金のための措置を講じる義務が課されるなど、派遣労働者の保護を図るためのさまざまな規定が法整備されています。
これらの規定に反した場合、派遣元や派遣先は許可の取り消しや罰金などの罰則が科される可能性があります。
(参考):e-GOV法令検索
その他の法律
上記の派遣法以外にも、派遣社員を守る法律があります。
派遣社員とはいえ、ほかの正社員などに適用される法律はすべて適用されます。たとえば労働基準法で定められている残業時間の上限規制や、労働安全衛生法に定められている健康診断の実施、最低賃金法に定められる都道府県ごとの最低賃金など、労働者を守るための法律はすべて適用されるといってよいでしょう。
ただし、派遣社員の場合は三者構造であるがゆえに、法律上使用者に課されている各種法的責任が、派遣元・派遣先会社のどちらにあるかが異なります。
派遣先と派遣元で異なる派遣社員の労務管理
【派遣社員の労務管理項目】
派遣先 | 派遣元 |
---|---|
労働時間の把握 | 賃金の支払い |
休憩の取得 | 割増賃金の支払い |
安全衛生面における管理 | 交通費の支払い |
各種ハラスメントの防止 | 有給休暇等の付与・管理 |
健康診断 | |
労災保険の適用 | |
その他福利厚生の提供 |
派遣先(派遣社員を雇用する企業)で行う労務管理
派遣社員が実際に就業するのは、派遣先企業です。派遣先企業は派遣社員の受け入れにあたり、その労務管理を行う義務があります。以下具体的に見ていきましょう。
労働時間の把握
派遣先は、派遣社員が何時から何時まで、どこで就業したかなどの労働時間を把握し、勤怠を記録する必要があります。また、時間外労働が発生した場合、その理由と時間の記録も必要です。労働時間、時間外労働の時間や通勤交通費の有無に基づき派遣料が計算され、派遣元企業から請求されることになるため、労働時間の把握は非常に重要です。
休憩の取得
上記労働時間とは別に、労働基準法に則って適切な休憩時間が取られているかも管理します。1日6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を、間に取らせなければなりません。直接雇用している従業員と同じく、派遣社員であっても等しく適用されるので注意が必要です。
安全衛生管理
派遣先会社では、初期や定期の安全衛生教育のほか、派遣社員が安全で健康に働ける環境を提供することが求められます。
なお、「一般健康診断」は派遣元会社で実施しますが、「特殊健康診断」が必要な場合は派遣先企業にて実施することとされています。
ハラスメント対策
2022年4月に義務化されたいわゆるパワハラ防止法を筆頭に、各種ハラスメント対策を講じることも大切です。派遣元・派遣先を同時に「事業主」とみなして適用されるとして、パワー・ハラスメントのほか、セクシュアル・ハラスメント、マタニティ・ハラスメント、育児・介護ハラスメントの防止措置義務を負うとされています。
派遣元で行う勤怠管理
派遣元は、派遣社員と直接雇用関係があるため、以下の勤怠管理を行う義務を負います。
賃金・割増賃金の支払い
派遣社員の勤怠に基づき、契約で定めた給与を所定の賃金支払日に支払う必要があります。時間外労働を行った場合は、契約に基づき割増賃金を支払う必要もあります。
休暇の管理・付与
派遣社員に休暇を取得させることも派遣元会社の義務となります。たとえば有給休暇を取得させる場合、要件を就業規則に記載して周知する必要があります。取得の要件・手続き・管理方法を定めておき、有給休暇の発生日や付与日数、残日数などを管理しておく必要があります。
労災
もし派遣社員が業務中や通勤途中にケガを負った場合は、労働災害や通勤災害として労災保険が適用される場合があります。その際、派遣社員が労災保険給付を請求するのは、直接の雇用元である派遣元会社となります。
健康診断
雇用元である派遣元会社は、安全衛生法に基づき、雇入れ時と年1回の健康診断を実施する必要があります。
その他福利厚生
派遣元によっては、さまざまな福利厚生制度を設けている場合があります。リフレッシュ休暇や各種サービス利用、慶弔見舞金の利用など、会社によってこのような福利厚生制度があれば、その利用や管理を行う必要があります。
派遣社員にも勤怠管理システムを利用するメリット
このように、派遣社員の労務管理は、一般的な直接雇用の社員の場合と異なり、派遣元・派遣先会社のデータの連携や重複管理の点でやや難しい側面があるといえます。このような労務管理をシステム化することで、どんなメリットが生まれるでしょうか? 派遣元・派遣先会社それぞれの視点で見ていきましょう。
派遣元から見たメリット
勤怠管理システムは、派遣社員などの従業員の出退勤の記録や管理をシステム上で行うものです。派遣社員と直接雇用契約を結んでいる派遣元としては、システム化することで以下のメリットが出てきます。
効率的なデータ管理
これまで派遣元と派遣先の両方で行ってきた勤怠管理のデータを突き合わせる作業が発生していましたが、システム化することで勤怠情報を一元管理できるため、データの重複を確認したり、整合性が取れていない勤怠について逐一確認したり、といった手間を省くことができます。
また、労働時間や残業時間をシステム上で集計することができるので、データ管理の効率アップが図れます。
コンプライアンス
労働者を派遣する場合、労働基準法をはじめとした労働関連法規、および労働者派遣法を遵守する必要があります。
勤怠管理システムを導入すれば、これらの法律に定められた規定、たとえば時間外労働の上限規制や休日労働などの管理が可能になります。アラート機能が備わった勤怠管理システムの場合、一定の水準に達した場合にアラートを発することによって、働きすぎを防止するなど、法律違反のリスクを避けることが可能です。
データの一括管理
従来は契約状況と勤怠のデータを突き合わせて管理する必要がありましたが、システム化することで、これらをデータとして一括管理が可能です。また、派遣社員ごとの勤怠状況をオンラインで派遣元・派遣先会社間で共有できるため、両者の連携がスムーズになります。
派遣先から見たメリット
派遣社員を受け入れている派遣先企業としても、勤怠管理をシステム化することで次のようなメリットが生まれます。
効率的なデータ管理
受け入れ派遣社員の勤怠について、現場で確認するのは派遣先企業となります。業務の指揮命令者が派遣社員の勤怠を日々承認することで、データが即時に派遣元へと共有することができます。こういった勤怠情報をひとつのシステム上で一括管理できるため、万が一出勤と有給休暇の申請が重なったりするなどの不具合が出た場合でも、検知したタイミングでデータの齟齬に気づけるでしょう。労働時間や残業時間をシステム上でリアルタイムに確認できるので、データ管理の効率が向上します。
コンプライアンス
派遣労働者を受け入れる場合、派遣元企業と同様に、労働基準法をはじめとした労働関連法規、および労働者派遣法を遵守する必要があります。労働基準法や労働者派遣法をはじめとする各種労働関連法規に違反しないよう、勤怠管理上のアラートをつけておくほか、勤怠管理の時間単位を1分単位にするなどして、未払い賃金が発生しないような工夫をすることができます。
データの一括管理
勤怠管理システムで派遣労働者ごとのデータを一括管理することができ、これをオンラインで派遣元・派遣先会社間で共有できるようになります。これまで連携やコミュニケーションにタイムラグがあったとしても、システムであれば即時に共有・確認することが可能です。
勤怠管理システム導入時のチェックポイント
まずは勤怠管理に必要な機能をチェック
出退勤、休暇、残業時間それぞれを一括管理できるか
勤怠管理といっても、項目はさまざまです。日々の出退勤の打刻はどうするか、休憩時間の管理や休暇の取得、日数などについて一括管理できる仕様になっているかどうかもポイントです。
また、勤怠管理で問題になるのが労働時間の切り捨てです。30分未満は切り捨てとなる設定のものであれば、その時間働いた分は未払いとなり、労働基準法違反となるおそれがあります。正しく1分単位での設定ができるか、コンプライアンスの観点から問題はないか確認する必要があるでしょう。
時間や場所を問わない柔軟な打刻方法はあるか
勤怠管理システムといっても、データの打刻方法はさまざまです。派遣先はさまざまであり、派遣社員の働き方も多様化しているので、就業場所や時間にとらわれない柔軟な打刻方法を備えていることは必須といってよいでしょう。特に、スマートフォンから打刻できる仕様となっていれば、より便利に導入できるはずです。
また、打刻の情報が紙ベースであったり、エクセルファイルをメールで送信するなどのやり取りをしていると、紙の紛失やデータ漏洩のリスクが伴います。勤怠管理システムを用いてデータのやり取りがシステム上でリアルタイムに行えるようになれば、こうした紛失や漏洩のリスクも削減することができます。
さらに、勤怠の締め日からデータ集計までのリードタイムが短縮できるので、すぐに給与計算を行える点も大きなメリットといえるでしょう。
シフト作成・管理機能はあるか
たとえば派遣先企業が販売系の場合などは、派遣社員がシフト制で働くケースもあると思われます。その場合、シフト作成機能・管理機能があれば、簡単にシフトを作成することができます。特に、同一の派遣先企業に複数の派遣社員を派遣して就業してもらうような場合は、それぞれのシフトの調整や管理が煩雑になりがちなので、システムにこういった機能があると便利でしょう。
多様な集計項目の設定が可能か
派遣社員が就業する派遣先企業は多種多様で、そこではさまざまな勤怠管理が行われています。集計に必要な項目もさまざまなため、どんな項目にも対応できるような集計機能が備わったシステムであることが求められます。また、派遣先によって集計に使う項目をアレンジできるような設定が可能なシステムであれば、より便利に使いこなせるでしょう。
導入時のサポート体制、セキュリティは充実しているか
勤怠管理システムを導入しようとしたときに、派遣元・派遣先によってはシステムに不慣れな場合もあることでしょう。特に、これまでアナログな手法で勤怠管理を行ってきた企業であれば、なおさら導入時・継続運用していくハードルが高くなってしまいます。
勤怠管理システムによっては、導入時やその後の継続利用の際のサポート体制もサービスに含まれているものがあります。ただし、サポート体制には簡易なメールのみ受け付けているタイプからWEB会議を通じてしっかり課題を洗い出し提案するような充実したタイムまでさまざまなため、無料でどこまでサポートが得られるのか、ランニングコストはかかるのか、サポートの中身はメール相談かコンサル設計まで含まれるかなど、具体的な内容も確認したうえで検討するとよいでしょう。
もし、システム利用にある程度慣れているリテラシーの高い会社であれば、簡易なサポートで十分かもしれません。一方、アナログからデジタルの設計構築を一から立ち上げるような場合であれば、社内における課題解決の手法を一緒に見極めてもらい、運用がある程度安定するまで伴走してくれる手厚いサポートが得られるほうがよいでしょう。社内の体制とサポートの内容、費用面を総合的に勘案して判断することをおすすめします。
まとめ
本記事では、派遣元・派遣先それぞれにおける勤怠管理のポイントについて解説してきました。派遣社員の勤怠管理には派遣という三者構造の契約形態であるからこそ、重複管理やデータ連携などの課題があります。派遣元・派遣先で共通の勤怠管理システムを導入できれば、このような課題の解決はスムーズに行えるのではないでしょうか。
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