テレワーク時の勤怠管理、在宅勤務を適切に管理するポイント
働き方改革が進むなか、自宅やサテライトオフィスなど従業員が会社外で働く「テレワーク」を導入する企業が増えています。業務の効率化などを実感する一方、これまでとは異なるテレワーク時の勤怠管理の難しさに頭を悩ませている人事労務担当者も多いのではないでしょうか。テレワーク時の勤怠管理を適切に行うには、従業員の勤務状況を時間や場所を問わず遠隔でも管理できる体制づくりが必要です。本コラムでは、テレワーク時の勤怠管理方法について解説します。
この記事の目次
テレワークを導入する際に企業が注意すべきこと
勤怠管理は法律で定められた企業側の義務
勤怠管理とは、企業が社員の労働時間など勤務状況を適正に把握・管理することです。原則として、勤怠管理は法律によって従業員を雇用するすべての企業に義務付けられています(労働基準法第32条、第36条等)。
勤怠管理を行う目的は、「適正な賃金の支払い」「過重労働の早期発見と防止」「従業員の健康維持」の3つです。対象となるのは、出勤・欠勤の日数をはじめ、時間外・深夜・休日を含めた労働時間、有給休暇の取得状況など多岐にわたります。適正な勤怠管理は、従業員の業務効率化と企業の業績向上に欠かせません。
テレワークでも36協定締結や割増賃金の支払いが必要
原則として、オフィス外で働く形態のテレワークにも労働基準法は適用されます。したがって、テレワークにおいても時間外労働や休日労働が発生する場合は、36協定の締結と届出が必要です。
さらに時間外労働や深夜労働、休日労働をテレワークで働く従業員が行った場合も同様に、企業は割増賃金を支払う義務があります。
「うちの会社はテレワークの場合、残業を原則禁止している」という理由は通用しません。テレワークで働く従業員が、実際に残業を行ったにもかかわらず、企業が割増賃金の支払いを拒否することは法律違反になるので注意しましょう。
テレワークに対応するための就業規則の見直し
テレワークは通常の出社勤務とは異なる部分がいろいろあり、すでにテレワークを導入している企業でも、そのための整備が追い付いていないことが珍しくありません。そのうちのひとつが「就業規則の変更」です。
厚生労働省の『テレワークモデル就業規則~作成の手引き~』によれば、労働時間制度やその他の労働条件が同じである場合、就業規則を変更しなくてもテレワーク勤務が可能とされています。
しかし、テレワークにおける通信費を従業員に負担させるなど、通常の出社勤務と異なることが生じる場合、やはり就業規則の変更が必要です。
また、出社勤務からテレワークに従業員が移行する際、フレックスタイム制を採り入れるといったような既存の就業規則に定められていない規定を採用する場合も、就業規則の変更が必要になります。こうしたルールが明確化されているのは、テレワーク勤務を行う従業員も通常の出社勤務を行う場合と同じく、労働基準関係法令が適用されるからです。
なお、就業規則に規定する内容としては、次のような要素を盛り込むのが一般的です。
●テレワークを命じることに関する規定
●テレワーク勤務の労働時間を設ける場合、その労働時間の規定
●通信費などの負担に関する規定
また、就業規則を変更する場合には、次の2つの手段があります。
①既存の就業規則にテレワーク勤務にかかる定めを記載する
②既存の就業規則に加え、テレワークに関する勤務規程を別途作成する
上記のいずれを採用するかは個々の企業の判断になります。わかりやすさの点でいえば、②のほうがよいとされますが、就業規則変更に際しては人事労務担当者が自社の状況をよく把握し、従業員に周知徹底しやすいほうを選択するとよいでしょう。
テレワーク導入のハードルとなる要素
テレワークの勤怠管理は、通常の出社勤務の管理とは異なる点がいくつかあります。どのような違いがあるのか、人事労務担当者が覚えておきたいポイントを見ていきましょう。
勤務実態の把握が難しい
出社勤務の場合、出社時と退社時の打刻や仕事中の状況を上司が確認できるため、勤務実態の把握は難しくありません。一方、テレワークにおいては、従業員が始業や終業の連絡を行っても自己申告制になりがちで、勤務状況が目に見えて把握できないため、労働時間通りに働いているかどうかがわかりにくくなります。その他、個々の勤怠状況が見えづらくなることで残業過多に陥っている従業員を見逃してしまい、知らず知らずのうちに36協定違反を引き起こしてしまうケースが考えられます。
仕事のプロセスが見えにくく人事評価が困難
勤務実態の把握の難しさとも関連しますが、テレワーク導入で人事労務担当者が頭を悩ます課題のひとつは「人事評価の困難さ」です。
営業職やエンジニアのような技術職など、明確に成果を数値化できる職種ならば、数字で評価することができます。しかし、人事や総務などバックオフィス系の職種の場合、仕事の成果を数値で表すことがなかなか難しく、どうしても「労働した時間」が人事評価に含まれるケースが多いことでしょう。したがって、正確な勤怠管理を行う仕組みを整えずにテレワークを実施すると評価の根拠があいまいになってしまう可能性があります。人事評価を公平にできるよう、まずは正確に勤怠管理ができるように社内のシステムを整えることが求められます。
テレワークによる勤怠管理を適切に行う方法
企業がテレワークを導入する際、最も注意しなければならないのが従業員の労働時間管理であることは、これまで見てきた通りです。人事労務担当者が押さえておきたい勤怠管理のポイントと、いくつかの対策方法についてそれぞれ解説していきましょう。
パソコンの使用時間など、客観的な記録を基礎に労働時間を管理する
企業には、テレワークにおいても従業員の労働時間を適正に把握する責務があります。厚生労働省のテレワークに関するガイドラインによれば、そのための方法として、従業員が仕事で用いるパソコンの使用時間など「客観的な記録を基礎とする」ことが挙げられています。
しかし、テレワークは従業員の行動が目に見えないだけに、やむを得ず自己申告を認めるケースも出てくることでしょう。
自己申告による労働時間管理のひとつの方法としては、従業員本人がエクセルなどに始業・終業をはじめ、業務内容やそれに関する作業時間などを入力して会社に報告するというやり方があります。人事労務担当者は、そのファイルを確認し、従業員の勤怠状況を把握します。
ただし、自己申告には従業員による虚偽の報告や記録のし忘れといったリスクが伴います。実態にそぐわない内容と判断された場合、調査を行って正しい労働時間を補正することも必要です。その一方で、企業は労働者が自己申告できる時間数の上限を設けるなど、「適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならない」とされています。
チャットアプリやリモート会議システムを利用する
チャットアプリを勤怠管理に使う方法は、比較的取り入れられている方法です。ビジネスチャットツールはログインなどが自動的に記録され、相談記録などのやり取りが共有可能なことも、利用されている要因のひとつといえるでしょう。
最近ではリモート会議システムを利用して、テレワークで働く従業員の勤怠管理を行っている企業もあります。顔が見えるシステムなので、密なコミュニケーションやチームワークが求められる業務に効果的です。
ただし勤怠管理の側面では、管理の煩雑さが懸念されます。基本的には連絡ツールであるため、出退勤情報をリアルタイムに記録できても集計などの機能は基本的には備えられていないことが多く、労務担当者が手打ちでエクセルなどを用いて管理する必要がでてきます。
勤怠管理システムを導入する
企業の勤怠管理業務をサポートしてくれる勤怠管理システムは、手間暇のかかるテレワークの勤怠管理をスムーズに行う機能を備えています。従業員ごとの勤務時間はもちろん、有給休暇の取得状況や時間外労働を超過していないかどうかの管理を行うことが可能です。
勤怠状況を日々の打刻から休暇管理まで一元管理できることは、バックオフィスの業務効率化に貢献するだけでなく、管理者の負担軽減に繋がります。便利な勤怠管理システムですが、よく課題に挙げられるのが「ITシステム導入のコスト」です。システム導入には導入設定の手間や費用もかかるため、短期間ですぐに体制を整えることは難しく、導入に失敗してしまうケースがあります。
導入成功のポイントは、導入初期のサポートが手厚く、誰でも簡単に操作できるシステムを選定することです。
サポートがしっかり受けられるサービスであれば、事前にシステム導入イメージを担当者とすり合わせて設定完了までの道のりを描くことができるので、導入時によくある設定ミスによって余計な稼働がかかったり、そもそもの操作方法がわからず頓挫したりする可能性を抑えられます。また、操作性のよいシステムであれば誰でもすぐに利用できるようになるので、せっかく導入できてもシステムが使いづらく従業員の利用が進まないということも防げます。
うまく立ち上げに成功すれば労務担当者の業務効率化まで叶えられるため、まずは「サポートの手厚さ」「システムの操作性のよさ」、この2点に注意して複数のシステムを比較検討して導入を進めていくことをおすすめします。
テレワークを行うなら、クラウド型勤怠管理システム導入がメリット大
近年の働き方改革の流れだけでなく、新型コロナウイルスが流行したことで、日本におけるテレワークの重要性は大きく高まりました。それに伴い、テレワークの導入に踏み切った企業も増加しています。多様な働き方が社会に浸透しつつあることに加え、離れた場所であってもリアルタイムに密なコミュニケーションを図れるツールが進化していることもあり、今後もテレワーク活用の流れは続くと思われます。
そうしたなか、テレワーク導入を検討・実施している企業および人事労務担当者にとって、テレワーク時の勤怠管理をどのように行うかが問題の焦点になるでしょう。おすすめなのは「クラウド型勤怠管理システム」の導入です。クラウド型とは、オンライン上にあるシステムへアクセスして利用するタイプのシステムを指します。導入のメリットについて、以下2つのポイントを詳しく解説していきます。
〈メリット①〉WEB打刻機能でいつでもどこでも出退勤管理が可能
テレワークの勤務形態は、必ずしも在宅勤務とは限りません。モバイルワークやサテライトオフィス勤務など、場所を問わずに自由に働ける形態は今後ますます広がりを見せることでしょう。また労働時間についても、「裁量労働制」や「フレックスタイム制」など、従業員が時間帯を選ぶことのできる就業のあり方が社会的にも求められてきています。こうしたなかで活用できるのが、クラウド型勤怠管理システムです。
WEB打刻機能が付いているクラウド型勤怠管理システムなら、自分のアカウントにログイン後、始業・終業を打刻することでシステムに自動でデータが保管されるので、インターネット環境さえ整っていれば時間や場所にこだわらなくて済むという特長があります。パソコンからだけでなく、スマートフォンやタブレットからも勤怠報告ができるため外出先から手軽に利用できます。
〈メリット②〉管理者画面のチェック、集計業務なども簡単
クラウド型勤怠管理システムは、各従業員の労働時間や出勤状況をリアルタイムに把握することも可能です。リモートワーク中も勤怠状況を把握しやすいため、残業過多になっている従業員がいないか定期的に確認できます。また、労働時間および残業時間など、給与支払いに必要な労働時間の計算を、日々システム内に蓄積している勤怠データをもとに自動集計で行うことができるため、労務担当者の業務効率化も期待できます。
まとめ
テレワーク時の勤怠管理を適切に行うための体制づくりには、様々な課題が発生します。勤怠管理の難しさやコミュニケーション不足など、これまでになかった新たな課題に直面するため、人事労務担当者にとってスキルの向上が求められます。法律を遵守しつつ、従業員の労務管理を適切に行っていくためには勤怠管理システムの導入などによって時間や場所を問わずに管理できる体制づくりを行っていくことをお勧めします。
株式会社ラクスでは、テレワーク時の勤怠管理をサポート可能なクラウド型勤怠管理システム「楽楽勤怠」を提供しており、様々な企業の勤怠管理をご支援しております。以下に
実際の導入事例をご紹介しますので、参考までにご一読ください。
●導入事例① 初のシステム導入で勤怠管理業務を3分の1に軽減!
紙とエクセルによる勤怠管理で多忙を極めていましたが、勤怠管理システムの導入により毎月の給与計算業務の作業時間を3分の1まで減らすことができました。さらに休暇管理業務においてはシステムへ一任できるようになったので業務の負担はほとんどなくなりました。
●導入事例② タイムカードから勤怠管理システムへ!月末業務の手間を削減
タイムカードによる打刻管理からシステムによるICカード打刻に変更したところ、月末の勤怠時間の集計がスムーズに、さらに有給休暇の申請・承認・管理が楽になりました。システム導入の懸念として、従業員にシステムによる打刻が定着するか不安でしたが、操作方法がシンプルでわかりやすかったのでうまく浸透しました。導入後も大きな問い合わせもなく運用できています。
●導入事例③ 業務効率・正確性アップと法人全体の労務管理の意識向上!
タイムカードによる集計に限界を感じ、勤怠管理システムの導入に踏み切ったところ、運用開始してからは、集計ミスなく月次の勤怠の締めも数時間で完了するようになりました。従業員自ら勤怠記録を打刻や残業申請を行う形式にしたことで、自分の勤怠を日々確認するようになったためか、打刻漏れがあっても間もなく修正申請があがってくるようになりました。
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- 監修石川 弘子
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