労働基準法が定める「休憩時間」ルールを解説
休憩時間や労働時間は、法律で定められた定義があります。労働に対して取得できる休憩時間の原則もあり、おろそかにすることで従業員の健康リスクを高めることにもつながります。働き方改革に大きな影響を与える要素でもあるため、目的や取得方法を今一度見直しましょう。
この記事の目次
労働時間と休憩時間
労働時間とは
「労働時間」には明確な定義があります。会社としては認知していなくても労働時間とみなされる場合があるため、しっかり把握することが大切です。
「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことで、使用者の明示、または黙示の指示によって労働者が業務に従事する時間をいいます。
労働時間に該当するかどうかは、就業規則や労働協約、労働契約などで決められるものではありません。あくまで指揮命令下にあるかどうかがポイントであり、客観的に見て労働者の行為が使用者から義務付けられているかどうかで判断されます。
- ①使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替えなど)や、業務終了後の業務に関連した後始末(清掃など)を事業場内において行った時間
- ②使用者の指示があった場合には、即時に業務に従事することを求められていて、労働から離れることが保障されていない状態で待機などしている時間(いわゆる「手待時間」)
- ③参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講、使用者の指示により業務に必要な学習などを行っていた時間
なお、使用者は、原則として1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。対象となる事業場は、労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用されるすべての事業場となっています。
休憩時間の規定
「休憩時間」とは、文字通り労働者が「休憩」をとる時間であり、肉体的・精神的に疲れを癒す目的で設定されています。つまり、労働からの解放が完全に保障されている時間であり、その自由利用の原則が労働基準法において、しっかり定められています。
休憩時間の規定は、労働時間の長さに応じて決められており、労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければいけないとされています。
- (参考):厚生労働省 労働時間・休憩・休日関係
休憩時間をまとめるか細切れで付与するかについては法律上の規定はありませんが、十分な休息が取れているかどうか、労働者に対して事業場が配慮して決定する必要があります。また、休憩時間を分割して付与する場合、その時間がごく短いと休憩時間の自由利用が事実上制限されてしまいます。これでは労働基準法の規定に沿っていると評価することはできません。従業員のパフォーマンス向上を考えた上でも、休憩時間の分割などを行う場合には、それらの点に注意する必要があります。
休憩時間の4つの原則
①休憩時間は就業規則に定める必要がある
休憩時間に関することは、就業規則に必ず定めておく必要があります。これは、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」に当たるためで、法令や労働協約に反してはならないことになっています。
絶対的必要記載事項には以下の内容が入っています。
- ①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに交替制の場合には就業時転換に関する事項
- ②賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期ならびに昇給に関する事項
- ③退職に関する事項(解雇の事由を含む)
②休憩時間は労働時間の途中に付与すること
休憩時間は、就業前でも就業後でもなく、労働時間の途中に与えなければなりません。労働基準法第34条では、使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないと規定されています。
- (参考):e-gov 労働基準法第三十四条
③休憩時間中は労働から解放されていること
休憩時間中は、労働者は自由でなければならないとされています。例えば、休憩中に電話や来客対応をしなければならないとき、労働者が権利として労働から解放されることが保障されていない、いわゆる手待時間となります。このような場合、事業場は別途休憩を与えなければなりません。
④休憩時間は一斉に与えること
休憩時間は一斉に与えなければなりません。一斉とは、その事業場にいる全ての従業員(派遣労働者を含む)が同時に休憩を取ることを意味します。
ただし、業種によって一斉に休憩時間をとると業務に支障が出ることがあり、例外として一斉付与しないように取り決めることもできます。その際は、適用除外のための労使協定が必要となります。
パターン別の休憩取得
業種・職種
休憩は全労働者に一斉に付与することが原則ですが、労働基準法第34条第2項によると、特定の業種については一斉に休憩を与えなくてもよいと定められています。
また、労働基準法第41条では、一部の業種の労働者は休憩の規定そのものが適用除外となります。労働基準法第41条では、休憩時間付与の適用除外となる労働者について以下のとおり定められています。「労働基準法の別表第1第6号(林業を除く)、または第7号に掲げる事業に従事する者」とは、農業・畜産業・養蚕業・水産業に従事する者、管理監督者または機密の事務を取り扱う者、監視又は断続的労働に従事する者を指します。
- ①労働基準法の別表第1第6号(林業を除く)、または第7号に掲げる事業に従事する者
- ②事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者、または機密の事務を取り扱う者
- ③監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
<出典:e-gov 労基法第41条>
なお、交替勤務を採用するなど、一斉に休憩を与えることが困難な状況もあります。そのような事業場には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結することで、一斉に休憩を与えなくてもよいとされています。
- (参考):厚生労働省 第19条 労働時間及び休憩時間
- (参考):愛媛労働局 休憩(第34条)休日(第35条)
雇用形態
正社員だけでなく、アルバイト、パート、契約社員、派遣社員など、どの雇用形態においても「労働者」として労働法の保護を受けることができます。したがって雇用形態によって「6~8時間の労働時間で最低45分、8時間を超える場合は最低1時間の休憩を取る」という原則が変わることはありません。
「業務委託」や「請負」といった形態で働く場合は、注文主から受けた仕事の完成に対して報酬が支払われるので、注文主の指揮命令を受けない「事業主」として扱われます。労働者として契約していないため、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできず、休憩時間付与の義務もありません。ただし、業務委託という形式でありながら、労働者のように指揮命令を受けて働く必要がある場合は、労働者としてみなす場合があります。
勤務形態
どの勤務形態においても6~8時間の労働時間で最低45分、8時間を超える場合は最低1時間の休憩を取るという原則は変わりません。フレックスタイム制を採用した場合にも、休憩時間は労働基準法第 34 条の規定どおり与えることが必要です。
一斉休憩の原則が適用される業種では、コアタイム中に休憩時間を定めることになります。一斉休憩の原則の適用除外の業種において休憩を取る時間帯を労働者にゆだねる場合には、休憩時間の長さを定めて休憩を取る時間帯は労働者にゆだねる旨を就業規則に記載しておくことが必要となります。
なお、一斉休憩の原則が適用される業種で、コアタイムの設定がないなど休憩を一斉に与えることができない場合には、一斉休憩の適用を除外する労働基準法第34条第2項の労使協定を締結するなど、各社の状況に沿った対応が求められます。
あいまいな休憩時間とトラブル
休憩時間のNG例
労働時間に応じて休憩を取ることは義務として定められています。
しかし、接客、利用者対応などのため、一律の時間に休憩が取りにくい環境の職場もあります。その場合は労働時間の適正な把握のため、休憩時間の取得状況についても記録を作成するなど企業側の対応がとても大切となります。ここでは、各地方の労働基準監督署が公表している事例をもとに、休憩時間に関する認識を確認しておきましょう。
- (参考):松本労基監督署 2 休憩
<ケース①>休憩時間中に業務をさせた
<内容>
休憩時間は決まっているが、その時間にも電話や来客応対、施設利用者の対応などをする必要があるため、事務所等に居させている。
<問題点>
事業所などに業務の都合で常駐することを求めた場合は、休憩とはみなされません。
<解説>
休憩時間とは、労働者が権利として労働から離れることが保障されている時間です。そのため、単に作業していない、いわゆる手待時間は労働時間として取り扱われます。電話や来客応対のために待機している時間は手待時間として労働時間とみなされ、別途休憩を与えなければなりません。
- (参考):松本労基監督署 2 休憩
<ケース②>実際に与えていない休憩を与えたことにした
<内容>
所定労働時間が8時間、休憩時間45分であり、残業する場合は終業時刻から15分休憩を取ることになっているが、残業を行う場合は休憩が取れないまま業務を続けていることが多い。しかし、割増賃金が支払われる時間外労働の時間からはいつも休憩時間の15分が差し引かれている。
<問題点>
取れなかった休憩時間を労働時間から差し引くことは違法となります。
<解説>
時間外労働を行わせる場合は、労働時間が8時間を超えるため、追加で15分の休憩を与える必要があります。そのため、このような場合、残業時に休憩時間を設定することが必要ですが、特に接客など、人を相手にする仕事の場合、終業時刻前からの顧客、利用者の対応が継続するなどして休憩が取れないまま残業するケースが報告されています。
法定の長さの休憩を与えないこと自体が違法ですが、実際に与えていない休憩を与えたことにして、その時間の割増賃金を支払わないことは違反に違反を重ねることになります。休憩が取りにくい環境であるならば、休憩時間の設定を変更するなど、職場内でよりよいやり方を検討することが求められます。
- (参考):松本労基監督署 2 休憩
<ケース③>業務終了後に休憩を付与した
<内容>
勤務終了後に1時間休憩室で待機させ、その時間を休憩としている。
<問題点>
終業後の休憩は、休憩時間を付与したことにはなりません。
<解説>
労働基準法第34条では、使用者は労働者に対してその日の勤務時間の途中に休憩時間を与えなければなりません。
休憩時間が取れなかった場合はどうなる?
労働者が必要な休憩時間を適切に取得できなかった場合、労働基準法違反となり6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となる可能性があります。
例えば接客業では、休憩するタイミングをあらかじめ決めていても、来客対応でなかなか休憩に入りづらい場合があります。そのため、上司などから「お客さんの少ない時間にうまく休憩を取ってくれ」と指示されるケースがよく見られます。ただし、これでは本来の休憩の目的である心身の疲れを取ることができず、能率が悪くなり、職種によっては災害を起こりやすくさせてしまいかねません。
そのようなことから、休憩時間は必ず労働の義務から解放されるよう法律では定められています。上記の例のように、来客の少ない時間帯であったとしても、客が来れば対応しなければならない状況は、手待時間と考えられ、休憩時間ではなく労働時間となるので注意が必要です。
- (参考):静岡労働局、愛媛労働局等 休憩 よくある質問と答え
- (参考):e-gov 労働基準法 第百十九条
休憩時間の適切な取得ができている企業の事例
職場の雰囲気によっては、上司の手前なかなか休憩が取りづらいことがあるでしょう。職種によっては、作業が中断することを理由に、休憩を取らないままサービス残業を続けることがあるかもしれません。しかし、それらはあってはならないことです。
そうした状況を払拭するためにも、職場では上司が率先して休憩を取るなど、規則に従った行動を示す必要があります。休憩時間を取る目的を今一度理解し、労働者によりよい環境で働いてもらうための企業の対策が重要です。
休憩の未取得を未然に防止するにはどういったことが必要なのでしょうか。ここでは、休憩時間を適切に取得できている企業の事例を紹介します。
<改善事例①>業種:貨物自動車運送業、労働者数:40名の場合
拘束時間、手待時間、休憩時間、実労働時間、時間外労働時間などを一覧表にまとめて一目で各種時間数が把握できるわかりやすい様式を作成し、日々の勤務状況が把握できるようになることで月中から労働時間の確認ができる体制を作り、いつの間にか長時間労働になってしまったということがないようにした。
- (参考):松本労働基準監督署 長時間労働改善事例集
<改善事例②>業種:教育機関、労働者数:19名の場合
トップダウンで休憩時間の説明を行い休憩取得を促した。また、休憩時間になったら事業所内でアナウンスを流すなど、業務から切り替えられるような工夫を行った。
以前は業務の都合で昼食時間中も労働しなくてはならず、さらに事務作業や打ち合わせが入ることで休憩時間を確保することが難しかったが、上記の取り組みにより余裕を持った休憩時間の確保が可能となった。
まとめ
労働者の心身の健康を守るために、休憩時間は就業規則に定めたうえで一斉に勤務中に付与しなくてはならず、その休憩時間中は労働から解放されていなくてはならないと法律で義務付けられています。
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