労働災害の基礎知識と企業の対応
労災という言葉を知らない方はほとんどいないと思います。しかし、言葉は知っていても「具体的にどういうものか」と聞かれて正確に答えられる方は、意外に少ないのではないでしょうか。
労災とは労働災害をちぢめた言葉であり、勤務中の病気やケガだけでなく、通勤中の交通事故なども含まれ、その内容は多岐にわたります。社会的話題となっているストレス性の精神疾患や、長時間労働による過労死なども労災として認定を受けており、労災が発生したときの正しい対応方法を知っておくことはとても大切です。
本記事では労災の基礎知識、発生したときに企業が対応すべきことなどを中心に、わかりやすく解説していきます。いざ労災が起きてしまったときに慌てることがないよう、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
労働災害とは?
労働災害、略して労災とは、労働者が仕事や通勤が原因で病気やケガをすることをいいます。労働安全衛生法第2条では、労働災害を「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう」と定めています。
労働災害が起きた際、労働者は「労働者災害補償保険法(労災保険法)」によって、負傷した場合の療養費や休業補償などの給付を受けることができますが、受けるためには労災申請を行い、労災認定を受けることが必要です。
一方、事業主には労働災害を防止する義務があり、不幸にも労働災害が発生し、労働者が死亡または休業した場合は、労働基準監督署に報告しなければなりません。労働基準監督署への報告を故意に怠るようなことがあると、労災隠しとして犯罪になりますので、注意してください。
- (参考):厚生労働省 労働災害について
労働災害の種類
業務災害(業務上の事由による傷病等)
業務災害とは、仕事が原因で起きた労働災害のことです。所定労働時間内や残業時間内に機械に巻き込まれてケガをしたり、高所から落下したりするなどの事例が該当します。
業務災害の場合、被災労働者が業務中に受けた負傷や病気なため、事業場の施設や設備の管理状況が原因で発生すると考えるのが一般的です。また、事業主の管理下にある状態で疾病を発症した場合、「業務上疾病」が認められるケースがあります。その際、「労働の場における有害因子の存在」「健康障害を起こしうるほどの有害因子のばく露」「発症の経過および病態」の3つの要件を満たすことが原則とされています。例えば、労働者が就業時間中に脳出血や心疾患を発症し、不幸にして亡くなったとしても、その発症原因に足り得る業務上の理由が認められなければ、業務と疾病との間に相当因果関係は成立しないと判断されます。
一方、就業時間外における発症であっても、その原因が業務上の有害因子のばく露によるものと認められれば、業務と疾病との間に相当因果関係は成立し、業務上疾病と認められます。
- (参考):厚生労働省 業務災害について
通勤災害(通勤による傷病等)
通勤災害とは、その名のとおり通勤が原因で労働者が傷害を負ったり、不幸にも亡くなったりすることです。典型的な事例としては、通勤中に交通事故にあうケースがあります。この際、通勤災害が認定されるかどうかは、移動経路が大きく関わってくるのが一般的です。
通勤の判断には、「就業に関する移動」「労働者災害補償保険法7条2項が定める類型の移動」「合理的な経路及び方法により行う」といった要件があります。たとえ、会社に届け出ているものとは異なる経路や方法で通勤中に事故にあっても、その経路や方法が合理的なものとして認められれば、労災保険上の通勤と認められることがあります。
具体的には、普段使用している交通経路が工事や事故で迂回を余儀なくされており、職場まで一番近いコースを通勤中、事故に遭遇した場合などです。
また、帰宅途中での「クリーニング屋への立ち寄り」「病院への立ち寄り」などは、日常生活上最低限度の行為として通勤経路から外れたとはいえず、通勤災害が認められます。
ただし、仕事と関係のない目的で通勤経路から外れ、負傷をした場合などは、原則として労災保険の補償の対象から外れます。
- (参考):厚生労働省 通勤災害について
第三者行為災害
第三者行為とは、労災保険給付の原因となる災害が、交通事故や傷害事件、他人の飼い犬に噛まれるなど第三者の行為によって労働者がケガをし、治療を受けることになるケースを指します。
第三者とは、以下のように定義されています。
(注)「第三者」とは、当該災害に関係する労災保険関係にある当事者(政府、事業主及び労災保険の受給権者)以外の者のことをいいます
災害が第三者の行為で生じたかどうかが認定のポイントとなります。認められた場合、労災保険受給権者の被災労働者もしくは遺族に対して、第三者が損害賠償の義務を有する対象です。
その際、災害にあった労働者もしくは遺族は、労災保険に対しても給付請求権を取得しますが、同一の事由について第三者および労災保険から重複して損害の補償を受けることになれば、重複して損害額の支払いを受ける不合理な結果が生じます。したがって、労働者災害補償保険法第12条の4では、第三者行為災害に関する労災保険の給付と民事損害賠償との支給調整を定めることで、重複支払いによって実際の損害額より多くならないよう、調整を可能にしています。
- (参考):厚生労働省 第三者行為災害について
労働災害の認定基準
労働災害のうち、業務災害の認定には、業務遂行性と業務起因性が大きく関連してきます。業務遂行性では、労働契約に基づいて労働者が事業主の支配下にある状態で起きた災害であるのかを問われています。
また、業務起因性では、業務が原因で発生した負傷や死亡なのかを問われています。業務災害の認定には、業務遂行性と業務起因性の両方の基準を満たさなければなりません。つまり、業務との間に相当の因果関係があることが必要です。
業務遂行性と業務起因性の関連性は、次のようなステップで表すことができます。
まずは、①業務遂行性が認められるのかが前提となり、次に②業務起因性のあるものだったのかを判断され、最後に③業務災害が認められます。
- (参考):福島労働局 1.業務災害とは
業務遂行性とは
業務遂行性が認められるには、使用者と労働者との間に労働契約関係があることが必須です。この場合の労働者とは、正社員のみならず、パートタイマーやアルバイトなど賃金が支払われている者すべてが対象となります。業務遂行性は、次のような3つの類型に分類することが可能です。
(1) 事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
- 1. 担当業務、事業主からの特命業務や突発事故に対する緊急業務に従事している場合
- 2. 担当業務を行ううえで必要な行為、作業中の用便、飲水等の生理的行為や作業中の反射的行為
- 3. その他労働関係の本旨に照らし合理的と認められる行為を行っている場合など
<出典:福島労働局 2.業務上の負傷について>
<例>
工事現場での作業中に落下、もしくは作業中に落下物に当たって負傷や死亡に至るなどのケースがこれに該当します。基本的に業務上の災害として認められることがほとんどですが、負傷や死亡の原因が作業中のいたずらや、個人的な恨みから第三者によって故意に物を落とすなどの行為で被災した場合などは、業務上と認めがたい特別な事情と判断される可能性があります。
(2) 事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
- 1. 休憩時間に事業場構内で休んでいる場合、事業附属寄宿舎を利用している場合や事業主が通勤専用に提供した交通機関を利用した場合など
- 2. 休日に構内で遊んでいるよう場合は、事業主の支配・管理下にあるといえません
<出典:福島労働局 2.業務上の負傷について>
<例>
昼休みなどの休憩時間および就業前後は、事業主の施設管理下にあるとはいえ、行為そのものは私的行為に該当します。その際、私的な行為によって発生した災害は、業務災害とは認められないので注意してください。
具体的には、職場で休憩中に同僚と野球などのゲームをしてケガを負った場合や、営業車で外勤に出て休憩中にトラックに接触し被災した場合などがこれに該当します。
(3) 事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
- 1. 出張や社用での外出、運送、配達、営業などのため事業場の外で仕事をする場合
- 2. 事業場外の就業場所への往復、食事、用便など事業場外での業務に付随する行為を行う場合など
- 3. 出張の場合は、私用で寄り道したような場合を除き、用務先へ向かって住居又は事業場を出たときから帰り着くまでの全行程に亘って業務遂行性が認められます。
<出典:福島労働局 2.業務上の負傷について>
<例>
旅行業務など事業主の管理下を離れていても、労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事に従事している業種に多いケースです。例えば、ツアーコンダクターが旅行中に不慮の事故に巻き込まれるなどが、これに該当します。ツアーのコースから離れて、一人行動するなどよほどの私的行為がない限り、業務遂行性が認められるのが一般的です。
- (参考):福島労働局 1.業務災害とは
- (参考):福島労働局 2.業務上の負傷について
業務起因性とは
業務起因性とは、業務に起因して病気やケガなどが生じたものであることを指します。業務と負傷や死亡などの間に、一定の因果関係が認められるかどうかが判断のポイントです。よく問題になるケースとして、過労死や脳梗塞、心筋梗塞などの疾病と、業務との関連性が挙げられます。
業務起因性がある場合
●事業場における業務時間内でのフォークリフト走行中の事故
業務遂行性および業務起因性が原則的に認められます。例外的なケースとしては、業務時間内であったとしても、同僚との喧嘩による暴走など、明確な逸脱行為によって事故が生じた場合は、業務起因性が認められません。
●長時間の残業や、日勤や夜勤の交代など著しく不規則な勤務形態による病気
以前よりも業務起因性が認められやすくなっており、労災認定基準に照らし合わせて判断されます。しかし、被災した労働者の日頃の生活習慣や、体質や性格といった個人的な要素も加味して判断されるため、一律な適用ではなくケースバイケースというのが現状です。
長時間労働の労災認定についての詳細は、以下のコラムで紹介しております。
業務起因性がないと判断される場合
●休憩中の私的な行為による事故
たとえば、休憩時間に同僚と野球をしてボールがぶつかり、負傷するケースなどを指します。業務遂行性は認められても、業務起因性は原則として否定されます。例外としては、当該事故が広場の管理不行き届きであるもの、事業場の設備の不備によるものなどが挙げられます。
その他、過労死および過労が原因による自殺に関しては、それが業務による負担が原因であるかどうかが、争点となります。
- (参考):厚生労働省 業務災害について
もしも労働災害が起きてしまったら
現場対応
不幸にして労働災害が起きた場合、まずは被災者の保護と二次被害防止のための状況確認が最優先です。次に、労災指定病院、もしくは一般の病院への搬送を行います。死亡を始めとする重大な労働災害および事故、または爆発など大規模な労働災害および事故が発生した場合、警察や消防への通報、救急車の要請を迅速に行いましょう。被災者の家族への連絡も忘れないように行いましょう。
労働災害が発生した場合、労働安全衛生規則第97条第1項により、所轄労働基準監督署長に連絡することが義務付けられています。労災保険受給の有無にかかわらず、報告は必要であり、仮に報告を怠った場合、労災隠しとして厳しい処分を受けるケースがあるので十分注意してください。
労働災害の発生を報告する所轄労働基準監督署は、事業場や建設現場を管轄する監督署です。災害発生地と事業場所在地が異なる場合は、被災者の所属事業場所在地の管轄となります。具体的な連絡先は、次のサイトから確認してください。
- (参考):厚生労働省 全国労働基準監督署の所在案内
原因調査
労働災害が起きたとき、現場対応を速やかに行った後、労働災害の再発を防止するため、原因調査を行います。労働災害の規模や内容によっては、 警察署・労働基準監督署の現場検証立会い、事情聴取への対応、労働基準監督署への災害再発防止対策の策定、提出が必要です。原因調査の具体的な内容およびヒアリング項目は、次のとおりです。
<主なヒアリング項目>
● 被害者、目撃者などから労働災害発生状況の聴取
● 事実と管理基準などとを照らし合わせた問題点を抽出
● 問題点から本質的な要素を洗い出し、災害防止対策の策定・実施につなげる等
手続き
現場対応と原因調査の後は、被災した労働者に対する労災保険の手続きを行います。被災した労働者が労災保険の給付をスムーズに受けることができるよう、手続きは迅速に行いましょう。届出に必要な書類は、被災者が治療を受けた「病院」に提出する書類と、使用者が「労働基準監督署」に提出する書類の2種類です。
● 病院への提出書類例
厚生労働省 労災保険給付関係請求書等ダウンロード
また、厚生労働省では全国の労災指定病院の一覧や名簿が簡単に検索できる「労災保険指定医療機関検索」を整備しています。
厚生労働省 労災保険指定医療機関検索
● 労働基準監督署への提出書類例
厚生労働省 労災保険給付関係請求書等ダウンロード
労働者が労働災害で負傷した場合、労災保険給付の請求を労働基準監督署長宛てに行う必要があります。ただし、休業4日未満の労働災害については、労災保険ではなく、使用者が労働者に対して休業補償を行うことが義務付けられていますので、ご注意ください。
- (参考):厚生労働省 労働災害が発生したとき
届け出
書類の提出が必要なのは、病院や労働基準監督署だけではありません。労働災害の規模や内容によっては、警察への届け出が必要となります。
警察への届け出が必要になる主なケースは、次の通りです。
● 労働災害によって、死傷者が3人以上発生した重大な事故
● 労働災害に事件性の疑いがある、あるいは治安維持上警察の関与が必要な場合
労働基準監督署と警察が、現場検証および事情聴取を行うことがあります。労働基準監督署だけでなく、警察も調査を行う理由は、該当する労働災害に対してのチェックポイントが異なるからです。
労働基準監督署のチェックポイントは、該当する労働災害が労働安全衛生法に違反していたかどうかが確認事項となります。これと比較して、警察は刑法における業務上過失致死傷事件に該当するかどうか、つまり事件性があるかどうかが判断基準です。
- (参考):厚生労働省 労働災害が発生したとき
再発防止策
不幸にして労働災害が起きてしまった場合、被災者への補償はもちろん、再発防止策に努めることが何よりも大切です。そのためには、災害がなぜ起きたのかを分析し、再発防止策の策定とその実施が求められます。
まず、労働災害が発生した作業および作業環境など、業務に従事していた労働者から、できるだけ具体的に聴取してください。
次に、機械・設備に関して危険な状態がなかったかどうか、作業のやり方に不適切な点がなかったかどうかなどについて、客観的に調査することが大切です。
そして、再発防止策の策定・実施に関しては、持続的な再発防止対策になっているか、作業者が自発的に取り組むことが可能であるかなどの点が、重要となります。
場合によっては労働基準監督署より再発防止策の提出を求められることがあります。都度様式は違いますが、以下のホームページに一例が掲載されていますので参考までにご確認ください。
労災補償について
労災補償に関する制度
労災保険とは、労働者が仕事や通勤する際に負った病気やケガ、死亡などに対し、国が労働者またはその遺族に保険給付を行う制度です。原則として、その費用は事業主が負担する保険料によってまかなわれています。労働者が費用を負担することはありません。なお、労災保険は労働保険と混同されがちですが、労働保険は労災保険と雇用保険の総称となりますのでご注意ください。
労災保険への加入義務
労働者災害補償保険法第3条で、従業員を1人でも雇っている事業主は、労災保険に加入するよう義務付けられています。例外的に農林水産業など一部の事業に関しては任意加入ですが、ほとんどの事業は必須ですので、該当する事業主の方は速やかに加入しましょう。
また、労働保険は正社員だけでなく、パートやアルバイトを始め雇用形態にかかわらず、すべての労働者が加入対象者です。労働者である以上、年齢制限もありません。未成年から65歳以上の高齢者も含まれます。
- (参考):厚生労働省 労災保健に関する主な制度
労災保険に未加入の場合
労働災害に遭った労働者が労災補償を受けたにも関わらず、事業者が加入手続きを怠っていた場合、事業主には追徴金の徴収をはじめペナルティが課せられますので、労災保険の未加入、保険料の滞納などは行わないでください。
その他、原則として個人事業主や経営者は、労災保険の対象外です。ただし、事業主に雇われた労働者以外でも、一定の条件を満たすことで、例外的に労災保険に加入することが可能になります。それが「労災保険の特別加入制度」と呼ばれるもので、中小企業の経営者・役員、個人事業主もしくは一人親方、農業従事者がその対象です。
- (参考):厚生労働省 労災保障
労災保険と健康保険
労働災害を受けた際、労災保険ではなく健康保険を使ってしまうケースがよく見られます。労働災害で受けた病気やケガの治療に、労災保険と健康保険を併用することはできません。その理由は、労災保険は仕事や通勤中における病気やケガが、補償の対象です。一方、健康保険は業務外の病気やケガが補償の対象となります。
なお、労災保険の補償対象は人身損害に限定されています。仕事や通勤中の事故とはいえ、ケガがなく物損事故の場合は労災保険の補償となりません。
労災保険を受けるための手続き
労災保険を受けるためには、いくつかの手順があります。まず、請求書を作成し、労働基準監督署長に提出しなければなりません。これは会社を通じてだけでなく、被災者が直接提出することも可能です。
請求書は厚生労働省のサイトから、ダウンロードできます。
労災保険の給付は、主に利用されているものを紹介します。それぞれのポイントを見ていきましょう。
①療養(補償)給付
仕事や通勤が原因で労働者が受けた病気やケガに関して、療養が必要となった場合に受けることができる補償です。病気やケガが治癒するまでの治療費が対象となります。通院にかかる交通費の給付を受けるには、一定の要件を満たすことが必要です。
②休業(補償)給付
仕事や通勤が原因で受けた病気やケガで、労働者が働くことができなくなった時に受けることができる補償です。給付可能なのは休業4日目からであり、 業務災害については、3日間休業の場合は事業主が休業中の所得を補償します。また、休業補償給付で可能なのは、1日の平均賃金全額ではなく、特別支給金と合わせて80%であることも覚えておきたいポイントです。
③障害(補償)給付
病気やケガの治療が終わった後、体に一定の障害が残っている時に受けることが可能な給付です。障害の程度に応じて、1級から14級までの等級が定められており、等級ごとに給付金額が決められています。労災を巡るトラブルで多いことの一つなので、知識を十分蓄えておきましょう。
④遺族(補償)給付
仕事や通勤が原因で受けた病気やケガで、不幸にも労働者が亡くなった場合、その遺族が受け取ることができる補償です。遺族補償給付は2種類あり、受給権者である間は継続的に受け取ることが可能な遺族補償年金と、一度だけ受け取りが可能な一時金がそれにあたります。給付金額は、亡くなった労働者との続柄、遺族の数などによって異なるので、注意してください。
⑤介護(補償)給付
障害(補償)年金または傷病(補償)年金の受給者であり、その1級もしくは2級に該当する重い後遺障害を有しているため、介護を受ける必要に対して給付される補償です。支給額は令和4年3月1日の時点で、常時介護の場合は「月額73,090~171,650円」、随時介護の場合は「月額36,500~85,780円」と定められています。
⑥傷病(補償)年金
仕事や通勤が原因で労働者が受けた病気やケガが、治療を開始してから1年6か月を経過しても治癒していない、もしくは一定の障害が残っている場合に、受けることが可能な給付です。傷病の等級は1級から3級まであり、症状の程度に応じて金額が定められています。
⑦葬祭料・葬祭給付料
仕事や通勤が原因で労働者が亡くなった場合、亡くなった労働者の埋葬を行うにふさわしい遺族に対して、支給される給付を指します。また、会社が葬祭を行う場合にも支給が可能です。葬祭料の請求期限は、被災した労働者の死亡から2年以内と定められています。これを超えた場合、葬祭料の請求権は消滅となりますので、間違えないよう注意してください。支給額は、「315,000円+給付基礎日額の30日分」または「給付基礎日額の60日分」のいずれかの、金額が高い方となります。
⑧アフターケア制度
病気やケガが治癒した後も、再発予防や後遺障害による新たな病気を未然に防ぐため、診察や検査などを無料で受けられる制度です。対象となるのは20の病気やケガで、詳しくは厚生労働省のサイトをご確認ください。
その他、労働災害補償法保険法第29条で定められている「特別支給金」があります。これは、被災にあった労働者が早く社会復帰できるように、通常の保険給付に上乗せして支給されるものです。
労働災害が企業に及ぼす影響
労働災害が発生した場合、原則として会社や役員が負うべき責任があります。それについてチェックしてみましょう。
刑事上の責任
一つ目は刑事上の責任です。具体的には、刑法における業務上過失致死傷罪(刑法第 211 条)、労働基準法をはじめとする労働関係法違反がこれに該当します。会社や役員が責任を負う可能性があるのはもちろんですが、事例によっては労働者が責任を負う場合もあります。
民事上の責任
使用者が安全配慮義務を怠るなどの違反があった場合、使用者は被災労働者に対して損害賠償責任など、民事上の責任を負います。こちらも労働災害事故の発生状況から、使用者と被災労働者の間で過失割合に応じ、過失相殺するケースがありますが、「労働契約の付随義務として安全配慮義務を尽くして労働者を災害から守らなければならない債務不履行責任(民法第 415 条)」による損害賠償を認める裁判例もあるため注意しましょう。
行政上の責任
使用者は労働災害の種類や状況、程度によって、作業停止や営業停止処分といった行政処分および行政指導を受けることがあります。
補償上の責任
使用者は、被災した労働者やその家族が生活困窮にならないよう、被災したことによる治療を含む生活保障を行うことが労働基準法および労働者災害補償保険法で義務付けられています。
社会的な責任
上記で見てきた使用者責任を放置した場合、一般社会からの批判や責任追及はもちろん、取引先からの取引停止など社会的信頼を失いかねません。特に最近はコンプライアンス遵守が強く求められており、日頃から真剣に対策を進めておく必要があります。
- (参考):厚生労働省 事業者の方へ
まとめ
本記事では労働災害、略して労災に関する基礎知識について解説してきました。不幸にも労働災害が起きてしまったとき、労災保険の申請をはじめ、関係機関への報告や慣れない書類の手続きなど、労使ともにかなりの負担が強いられます。深刻なトラブルになるケースも珍しくなく、泥沼化すると労働者は職を失い、使用者は社会的信用と会社を失うことになりかねません。
労働災害が起きないことが一番望ましいわけですが、どれだけ気を付けていても完全ということはありません。労働時間の管理や、産業医との連携強化、職場の動線や業務マニュアルの見直しなどを通じて労働者への周知徹底を行い、できるだけ労働災害を起こさないように取り組んでいきましょう。
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