<教員の働き方改革>文科省の取組や成功事例を解説【社労士監修】
日本の教員の長時間労働が注目されています。文部科学省による公立の小学校、中学校の調査によると、小学校教員は年約700時間、中学校教員は年約1,000時間の時間外労働を行っているというレポートがあります。
長時間労働の原因は、教員の負担業務が多岐にわたるためとされており、文部科学省が主体となり働き方改革が進められています。
この記事では、教員の働き方改革が注目されている背景や、取り組みのポイント、成功事例について、文部科学省が推進している内容を骨組みに紹介していきます。
この記事の目次
教員の働き方改革の現状
環境が複雑化・多様化する中で、学校に求められる役割が拡大しています。それに伴い最も課題とされているのが、教員の長時間労働です。
教員が生徒と向き合う時間を確保し、誇りとやりがいをもって働くことのできる環境を作るために、文部科学省では課題解決に向けた組織を設置し方向性を検討、教員の労働環境改善のための取り組みを行っています。
教員の労働環境の現状
2016年度の公立学校における時間外在校等時間の状況(2016年度勤務実態調査等を踏まえ推計)は、以下とされています。(※1)
● 小学校:月約59時間 、 年約700時間
● 中学校:月約81時間 、 年約1,000時間
教員の長時間労働の主な原因の一つのは、授業以外の部活顧問や事務作業などの業務が多い点です。
教員が授業以外にも、生活指導や部活指導などを一体的に行う「日本型学校教育」は国際的にも高く評価されています。しかし、学校教育の現場では、複雑化・多様化する課題が教員に集中してしまい、授業などの教育指導に専念しづらい環境になっています。(※2)
文部科学省が提唱する教員の働き方改革
2019年1月25日に文部科学省の中央審議会により「学校における働き方改革推進本部」が設立され、国、教育委員会、学校が連携しながら、以下の取り組みが行われています。
● 教職員定数の改善・支援スタッフの配置拡充
● 学校DXの推進、ICT環境整備の支援
● 客観的な勤務時間管理の徹底
● 部活動の見直し
● 働き方改革に関する事例の横展開
詳細について、後述の教員の働き方改革のポイントで解説します。
- (参考):文部科学省 学校における働き方改革推進本部
- (参考):文部科学省 学校における働き方改革推進本部資料(第6回) 学校における働き方改革に係る文部科学省の取組状況
- (参考):文部科学省 学校における働き方改革推進本部資料(第6回) 『家庭・地域の宝である子供たちの健やかな成長に向けて』~ 学校における働き方改革の実現 ~≪文部科学大臣メッセージ≫
教員の働き方改革、主な課題
教員の働き方改革の主な課題は以下の2つです。
● 授業以外の事務作業が多い
● 部活動指導の負担が大きい
授業以外の事務作業が多い
教員の働き方改革の課題の1つ目は、授業以外の事務作業の多さにあります。
学校教員がこどもたちと向き合う時間を確保し、教員がやるべき業務に専念できる環境をつくるためには、業務内容の見直しが必要です。
教員の業務内容は、授業の準備やテストの採点、給食費の徴収、成績の評価など授業以外の事務作業が多く負担となっているという特徴があります。
部活動指導が負担が大きい
教員の働き方改革の課題の2つ目は、部活動指導の負担の大きさです。
部活動の顧問対応によって土日を活動にあてることも多く、適切な休養が取れていないという実態があります。そこで、教員の部活動の負担を大幅に軽減するための取り組みが求められています。
教員の働き方改革のポイント
ここからは、教員の長時間労働を防ぐための具体的な取り組みポイントを紹介していきます。
教員の働き方改革の主なポイントは以下の4つです。
● 教員の担うべき業務に専念できる環境を確保する
● 部活動の負担を大胆に軽減する
● 長時間労働改善する
● 国、教育委員会の支援体制を強化する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
教員の担うべき業務に専念できる環境を確保する
教員の働き方改革における1つ目のポイントは、教員の担うべき業務に専念できる環境を確保することです。学校現場における教員の業務を見直して、教員がしっかりと子どもたちと向き合える時間を確保できるように業務の適正化が進められています。
具体的な取り組みには以下があります。
1.教員の従来の業務を不断に見直す
- ●部活動の指導や単独での引率等を行う部活動指導員(仮称)の配置促進
- ●部活動指導員(仮称)の法令上明確化、ガイドラインに研修の実施等の配慮を明確化
- ●地域の指導者を発掘し学校につなぐ地域コーディネーターの配置促進
2.学校給食費などの学校徴収金会計業務の負担から教員を解放する
- ●地方自治体等での学校給食費会計業務の実証研究の実施
- ●学校給食費の会計業務に関するガイドラインの検討
- ●学校給食費以外の学校徴収金でも実証研究を実施して取り組みを促進
- ●学校事務の共同実施を行う組織を法律上明確化して事務機能の強化を促進等
3.統合型校務支援システム等を整備し、校務を効率化・高度化する
- ●統合型校務支援システムの導入などによる効果の実証的な研究の実施
- ●共同調達・共同運用やクラウド化の推進についての導入・運用コスト削減等に関する支援
- ●システムに精通した人材の配置や体制の確立に関する支援の検討
- ●リモートアクセス等についての実証研究の実施やガイドラインの検討等
部活動の負担を大胆に軽減する
教員の働き方改革における2つ目のポイントは、部活動の負担を大胆に軽減することです。適切な休養をとらない行き過ぎた活動は、教員、生徒ともに、さまざまな無理や弊害の原因と考えられています。
教員の勤務負担の軽減、生徒の多様な体験の充実、健全な成長を促す観点からも、休養日の設定の徹底や部活動の大胆な見直しを行い、部活動の負担の適正化が推進されています。
主な取り組みは以下の2つです。
1.休養日明確な設定等を通じ、部活動の運営の適正化を推進
- ●毎年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」を活用して休養日の設定を徹底
- ●運動部活動に関する総合的な実態調査を実施する
- ●スポーツ医科学の観点や学校生活への影響を考慮した、練習時間や休養日の設定に関する調査研究を実施する
- ●上記調査等の結果を踏まえて総合的なガイドラインを策定する
- ●日本中学校体育連盟に対しての大会運営等の見直しの要請を行う等
2.部活動指導員の配置など部活動を支える環境整備を推進
- ●部活動の指導や単独での引率等を行う部活動指導員(仮称)の配置を促進する
- ●部活動指導員(仮称)を法令上明確化し、ガイドラインに研修の実施などの配慮を明確化する
- ●地域の指導者を発掘して、学校につなぐ地域コーディネーターの配置を促進する
長時間労働という働き方を改善する
教員の働き方改革における3つ目のポイントは、長時間労働改善です。教員が本来の労働時間内で業務を終えられるようにするため、学校、教育委員会、国で連携して取り組みが進められています。
勤務時間管理の適正化のための取り組みとしては以下が挙げられます。
● 勤務時間管理の適正化の推進
● 国における定期的な勤務実態調査の実施の検討
● 教職員の意識改革と学校マネジメントの推進
● メンタルヘルス対策の推進
国、教育委員会の支援体制を強化する
上記3つのポイントを着実に実施し実効性を上げるため、国・教育委員会における支援体制の整備・強化が図られています。
主な取り組み内容は以下となります。
● 文部科学省内に「学校環境改善対策室」(仮称)を設置し、勤務環境の改善を促進する
● 勤務環境改善の指導・助言等を行う「学校業務改善アドバイザー」を同室に配置し、自治体等に派遣する仕組みを構築する
● 教育委員会における学校の勤務環境の改善を促進するための連携体制の構築を促進する
労働時間を正確に把握する効果
ここからは、勤怠管理による働き方改革の成功事例について解説します。
労働時間の正確な把握は以下の改善に繋がると考えられています。
● 残業時間の減少
● 年休取得日数の増加
● メンタルヘルスの状態の良好化
働き方改革成功事例として、北九州市教育委員会の勤怠管理導入による事例を紹介します。北九州市教育委員会では、校務情報のデータ化・データ共有化、事務処理の効率化、事務負担の軽減等を図るため、服務管理等を行える校務支援システムの導入の取り組みを行い、複数の効果を得ています。
1.教職員の出退勤時間のデータ活用で学校運営に役立てる
学校管理職等による所属教職員の出勤退勤時間が正確に把握できるようになったことで、所属教職員一人ひとりの業務の繁忙状況を明確化することができ、職員の体調管理等に活用されています。
2.教育委員会から管理職への情報提供
教育委員会でも、すべての教職員の出退勤時間を把握できるようになったことで、学校状況の把握や健康管理、業務改善の効果検証などに役立てられています。
教育委員会から各学校管理職に対し、市内全校の平均月在校時間(出勤して退勤するまでの時間から勤務時間を除いた時間)の情報を提供した結果、勤務時間管理の徹底を促す効果が得られています。
3.健康被害防止対策
勤怠管理情報をもとに、健康管理が進められています。教育委員会では、以下に当てはまる教員のうち面接指導を希望した者について、労働安全衛生法に基づき産業医等による面接指導を実施しています。
● 1か月の在校時間が100時間を超えた
● 2か月の在校時間平均が80時間を超えた
なお、新規採用職員については、在校時間が100時間を超えた者、そのほかの職員については、在校時間が連続3ヶ月100時間を超えた者等を対象に、夏季および冬季休業期間中に集中的に産業医による面接指導を実施し、健康の確保に努めています。
まとめ
教員の長時間労働の原因は業務負担の多さにあります。職務の特性上、休みがとりづらく外部委託も難しい状態で、なかなか負担が減らないという現状があります。
そんな中、最後に紹介した事例のように、学校現場でも校務支援システムなどのIT活用推進が行われ始めるなど変化が起きています。
今回は公立学校の事例を紹介しましたが、私立学校も同様に教員の業務負担が多く残業が多い傾向にあるとされています。公立と違い私立の場合は、公務員ではなく一般企業と同様の扱いとなり、労働基準法の原則にのっとった勤怠管理が必要となります。もし労務管理に不備がある場合は早急な対応が必要です。
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大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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