振替休日と代休の違いとは?法令違反や従業員とのトラブル防止方法もご紹介
勤怠管理において、振替休日や代休の処理で困った経験はないでしょうか。
適切に処理を行わなければ、社員とのトラブルや労働基準法への抵触といったリスクが生じる可能性があります。
本記事では振替休日と代休についてさまざまな面からご紹介します。
振替休日や代休の勤怠管理でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
振替休日と代休
まず、それぞれの制度の違いについて解説します。
- (参考):厚生労働省 振替休日と代休の違いは何か。
- (参考):厚生労働省 振替休日と代休の相違点
振替休日と代休の違い
振替休日と代休は、休日を取得する点では同じですが、厳密には全く違った制度です。
厚生労働省によると、振替休日と代休の違いは以下のとおりです。
振替休日 | 代休 | |
---|---|---|
意味 |
●事前に手続きしておき、あらかじめ定められている休日を、 ほかの労働日と交換する ●休日労働にはならない |
●休日に労働し、後日代わりの休日を取得する ●休日労働になる |
要件 |
●就業規則などに振替休日の規定をする ●振替日を事前に特定する ●振替は近接した範囲内とする ●遅くとも前日の勤務時間終了までに通知する |
●特にないが、制度として行う場合、就業規則などに具体的な 記載が必要(代休を付与する条件、賃金の取り扱いなど) |
賃金 |
●同一週内で振り替えた場合、通常通りの賃金で支払われる ●週をまたがって振り替え、週法定労働時間を超えた場合、 時間外労働に対する割増賃金の支払いが必要 |
●休日労働に対する割増賃金の支払いが必要 ●代休日を有給・無給とするかは、就業規則などの規定による |
<出典:厚生労働省 振替休日と代休の相違点>
以下で、それぞれの制度の特徴を詳しく解説します。
振替休日とは
振替休日とは、所定の休日をほかの勤務日に入れ替えることです。振替休日を行う場合は「事前に、想定される勤務日と入れ替え対象となる休日を決めておく」必要があります。
以下、注意点とポイントをご紹介します。
①割増賃金が発生することがある
「代休」とは違い、振替休日の使用期限は法律上規定されていませんが、振替休日を取得するタイミングによって割増賃金が発生する場合があるので注意しましょう。
②月またぎの振替休日で給与支払いが変わることがある
月をまたぐ振替休日の設定をする際は給与計算が変わる場合があるため、賃金支払いのタイミングを考慮する必要があります。
③法定労働時間を超える場合は36協定の締結が必要
休日の振り替えにより週の労働時間が40時間を超える場合は法定外労働となるため、36協定の締結が必要となることも理解しておきましょう。
④再振替は可能、ただし法定通りの休日確保が必要
労働基準法で明確なルールは定められていませんが、一度設定した振替休日を変更する再振替も可能です。ただし、週1日(または4週4休)の休日が確保されるように留意してください。
代休とは
代休は休日に勤務した代償として別の労働日を休みとする制度であり、事前に休日を割り当てられるわけではありません。
以下、注意点とポイントをご紹介します。
①休日手当などの割増賃金が発生する
休日に勤務すると休日割増賃金が発生します。もし労働者が代休を取得せずに法定労働時間を超過した場合、時間外手当と休日手当の支払いが必要になります。
②代休取得の義務はないが、就業規則に記載している場合は必須
会社側は労働者に代休を取得させる義務がないため、法律上の取得期限はありません。
代休の取得を義務付けるかは、会社の判断に任されていますが、就業規則に記載されている場合、代休取得は必須となります。
覚えておきたい休日や休暇の基礎知識
適切な労務管理を行うためには、休日や休暇について理解しておくことが大切です。この章では、法定休日と所定休日の違いや休暇の種類について詳しく解説していきます。
- (参考):e-GOV法令検索 労働基準法
- (参考):厚生労働省 改正労働基準法に係る質疑応答
- (参考):厚生労働省 改正労働基準法の施行について
- (参考):厚生労働省 労働時間・休日に関する主な制度
- (参考):山梨労働局 代休?振替休日?
- (参考):働き方・休み方改善ポータルサイト 特別な休暇制度とは
法定休日と所定休日
法定休日と所定休日の違いは、以下の通りです。
法定休日 |
●労働基準法35条で「毎週少なくとも1回または4週間に4回以上の休日」と規定 ●週休2日制を採用している場合、就業規則等で定めていない時は、2日の内1日が法定休日にあたる ●1週間のうち、1日は与えなければならない |
---|---|
所定休日 |
●会社が自由に決められる ●週休2日のうち、どちらを法定休日するかは各企業が就業規則等で定めることができる ●定められていない場合、暦週の最後にある休日が法定休日 ※土日が休日の場合、土曜日が法定休日となる |
週休2日制は、いずれかが法定休日・所定休日になります。週休2日制を採用している場合、どちらが法定休日か把握しておきましょう。
なお、法定休日に働かせる場合の主な注意点は以下です。
● 36協定が必要となります。
● 休日割増賃金が発生します。
● 年少者(満18歳未満)は出勤できません。
法定休暇と法定外休暇
休暇は、法定休暇と法定外休暇の2種類に区別され、違いは下記のとおりです。
● 法定休暇:労働基準法等で定められた休日
● 法定外休暇:企業が独自に定めている休暇
法定休暇は労働基準法で定められた休暇となっており、下記一覧が法定休暇に分類されます。
年次有給休暇 | 労働基準法 第39条 |
賃金が保証されており、所定労働日の勤務が免除される休暇 |
---|---|---|
育児休業 | 育児介護休業法 第5条 |
子どもが1歳になるまで、育児のために連続して取得できる休暇 |
妊娠休暇・通院休暇 | 男女雇用機会均等法 第12条 |
妊娠中の健康診査のための休暇 |
産前産後休業 | 労働基準法68条 |
産前休業は出産予定日の6週間(多胎の場合は14週間)前から 任意で取得できる休暇 産後休暇は、出産日翌日から8週間が経過するまで就業を原則的に 認めないもの |
子の看護休暇 | 育児介護休業法 第16条 |
小学校入学前の子どもの通院や看病のための休暇 |
一方、法定外休暇は企業が独自に定めている休暇で、特別休暇などが法定外休暇にあたります。なお、休暇時の賃金支払いの有無は企業に決定権があります。
特別休暇について詳しく知りたい方は、以下の記事で確認してください。
勤怠管理や給与計算に必要な割増賃金の知識
勤怠管理や給与計算には、割増賃金の知識が欠かせません。
ここでは、3つの割増賃金「時間外手当・残業手当」「休日手当」「深夜手当」の内容と算出方法を説明します。
時間外手当・残業手当
1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて勤務させた場合、時間外手当・残業手当という形で、割増賃金が支払われます。
時間外手当は、「1時間あたりの賃金×25%以上の割増率」で算出します。ただし、時間外労働が1か月60時間を超えた場合、割増率は50%以上に引き上げられるので注意しましょう。(※2023年4月から中小企業にも適用)
なお、時間外労働のカウントは、実際に出勤して働き始めた時間から起算します。
法定労働時間の上限である1日8時間勤務の場合(条件は、9時始業の18時終業で1時間休憩を付与)を例にとって説明します。たとえば、就業時間より1時間遅刻して10時から勤務し19時に終業した場合、本来なら定時を過ぎた1時間分を時間外労働としてカウントしますが、この例では1時間遅刻をしており、実労働時間が法定労働時間内に収まっているため時間外労働とはなりません。
深夜手当
原則22時から翌日5時までの間に労働をすると、深夜手当が発生します。
深夜手当は、「1時間あたりの賃金×25%以上の割増率」で算出します。
さらに、深夜時間帯の労働が時間外手当の対象になる場合、加えて時間外労働手当も割増賃金の支払いが必要です。時間外労働が深夜までかかる場合、「1時間当たりの賃金×1.5倍(時間外労働が60時間を超える場合は×1.75倍)(時間外労働1.25倍+深夜労働0.25倍)」として計算します。
休日手当
法定休日に労働をさせた場合に35%以上の割増賃金の支払いが必要です。
ただし、所定休日に勤務した場合、休日の割増賃金の対象とはなりません。
適正な休日手当の算出のためには、法定休日・所定休日のどちらに出勤したのか把握しておくことが大切です。
割増賃金の算出方法
割増賃金を算出するためには、算定の基礎となる割増賃金基礎額を計算する必要があります。
計算方法は下記のとおりです。
1365日(うるう年の場合は366日)-休日日数=年間稼働日数
2年間稼働日数×1日の所定労働時間数=年間総労働時間数
3年間総労働時間数÷12=月平均所定労働時間数
4月の賃金合計額÷月平均所定労働時間数=割増賃金基礎額
※月の賃金合計額からは、労働と直接の関連性が薄い手当を控除することが可能です。
計算した割増賃金基礎額に割増率を乗じたものが、割増賃金の単価となります。
割増賃金について詳しく知りたい方は、厚生労働省のサイトを確認してみましょう。
また、時間外手当について、固定残業手当制を採用されている場合は、時間外手当についても把握しておきましょう。固定額を超えた分の時間外労働については、時間外手当の支払いが必要です。
なお、この場合の算定基礎額計算における月の賃金合計には、固定残業手当を算入しなくてもよいとされています。
割増賃金については、下記記事でも説明していますので、確認してください。
振替休日と代休の賃金計算
振替休日と代休は、賃金の計算方法が異なります。
そこで、振替休日と代休の賃金計算を詳しく解説していきます。
それぞれの内容や違いを把握したうえで、適切な勤怠管理を進めていきましょう。
振替休日を適用したときの賃金計算
振替休日を適用した場合、同一週内に振り替えれば、割増賃金の支払いは発生しません。
割増賃金の支払いが必要になる可能性があるのは、週をまたいで休日を振り替えた場合です。前の週で労働時間が法定労働時間を超えると、時間外労働に対する割増賃金支払い義務が発生します。
例として、1週間を日曜はじまり土曜日終わりとしたとき、割増賃金が発生する具体的な例を解説します。
1週間の法定労働時間は週40時間までと決まっています。そのため、日曜日に出勤し、翌週の月曜日に休日を振り替えると、日曜日から土曜日までの1週目の労働時間が48時間となり法定労働時間を超えてしまい、割増賃金が発生します。
このように、所定労働時間を法定労働時間の上限で設定している場合など、同一週内で休日を振り替えないと週の所定労働時間の40時間を超えてしまう可能性があるので注意しましょう。
また、月をまたいで振替を行った場合、振替労働日にかかる賃金を当該月の給与として支払う必要があるので、注意しましょう。
賃金支払い5原則により「実質月ごとに給与の全額支払いの義務」が定められています。そのため、もし月をまたいで休日を振り替えた場合、振替出勤が発生した月の給与支払いのタイミングで振替出勤分の給与を支払わなければなりません。そして、たとえばその後翌月に振替休日を取得した場合は、翌月の給与から休日控除をおこなう必要があります。
スムーズな処理を行いたい場合は、少なくとも同一賃金計算期間内に振り替えることをおすすめします。
代休を適用したときの賃金計算
法定休日に労働し、代休を取得した場合、休日手当の支払いが必要になります。
法定休日に出勤すると、休日労働にあたります。一方、所定休日に出勤しても、休日労働ではないため、休日割増賃金を支払う必要はありません。
ただし、所定休日の場合でもその週の労働時間が法定労働時間を超過すると時間外手当の支払いが必要となりますので注意しましょう。
振替休日や代休の取得で起こりえるトラブル
振替休日や代休の処理を適切に行わなかった場合、トラブルに発展する可能性があります。ここでは、よくあるトラブル事例について解説します。
- (参考):松本労働基準監督署 働条件問題事例集
- (参考):厚生労働省 時間外労働、休日労働
36協定を行わずに法定休日に労働させている
時間外労働だけでなく法定休日に労働をさせる際も、労使協定を締結して労働基準監督署への届出が必要です。労使協定は労働基準法36条に定められているため、36協定(サブロク協定)と呼ばれています。
36協定は労働者代表または労働組合と使用者の間で締結し、毎年届け出を行うものです。労働基準監督署への届出書様式等は、厚生労働省のサイトから確認してください。
時間外労働が発生したが、割増賃金を支払っていない
たとえ振替休日の取得をしても、週単位で労働時間をカウントした場合において、週の法定労働時間上限である40時間を超えた労働があった場合は割増賃金の支払わなくてはなりません。なお、40時間を超えた分については25%以上の割増賃金支払いが必要となります。
法定休日の労働分の割増賃金を支払っていない
代休の付与で起こるケースですが、法定休日に労働した場合は休日割増賃金の支払いが必要です。その場合、35%以上の割増賃金の支払いが必要となります。
勤怠管理システムでミスのない休暇管理
振替休日と代休は、休日をとる点では同じですが、発生する割増賃金や手当の額が異なり給与計算に違いが出るところに注意が必要です。また、振替休日を取得する場合は事前に職場に伝えておく必要があり、頻繁に制度利用が発生する場合は労務管理が煩雑になることが予想されます。
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